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ボクシングPRESSBACK NUMBER
“衝撃の1回KO”世界3階級制覇王者・中谷潤人が語る「過去イチきつかった地獄の砂漠トレ」…金メダリスト・阿部一二三から刺激を受けた会話とは
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShigeki Yamamoto
posted2024/09/05 17:04
完璧な1回KO勝利でWBC世界バンタム級王者を初防衛した中谷潤人。世界3階級制覇王者を作り上げた地獄のトレーニングと今後の展望を語った
中谷と同じくサウスポーのペッチは過去、同暫定王座決定戦で現WBA同級王者・井上拓真と対戦して12回判定負けしている。今、バンタム級は4団体それぞれ日本人王者が君臨しており、井上が13日に同級3位・堤聖也と3度目の防衛戦を行なう。中谷と井上がそれぞれベルトを守れば、2人による統一戦の機運が自ずと高まってくることは言うまでもない。
まずは目の前の相手に集中する。30歳のペッチは井上に負けたとはいえ76勝(53KO)1敗のキャリアを誇る経験豊富な選手である。
「本当に一つひとつ。良いパフォーマンスを出して勝っていけば、(自分の)評価を高めることができると思っています。自分がやるべきことをやる、それだけを考えていきたいですね」
敢えて井上の印象をたずねてみた。5月6日、東京ドームでの石田匠戦を現地で観戦している。
「統一戦の候補として、拓真選手っていうところはもちろんあります。(印象としては)対戦相手に対して重要なパンチをしっかりと持ってこれる選手だな、と。でも今は次の試合だけに気持ちを向けていきたい」
金メダリスト・阿部一二三との会話
新たに刺激を受ける出来事もあった。
親交があり、過去に試合の応援にも来てもらったパリ五輪、柔道男子66キロ級で金メダルを獲得した阿部一二三の祝勝会に招待され、いろいろと話すことができたという。
「4年に1度のオリンピックに合わせるコンディションのつくり方とか、出血して棄権になる可能性もあったと聞いて、そのときの心境だったりとか。計量前の写真を見せてもらったんですけど、筋肉を残したまま絞るっていうボクサーとはまた違うやり方で。いろいろ話ができて、勉強にもなりました。今度、また応援に行くと言ってもらえたので、自分も頑張らなきゃいけないなって」
8月22日にペッチとの防衛戦が発表され、記者会見後に渡米した。今回もルディトレーナーのもと、1カ月強に及ぶ強化キャンプを行なう予定だ。
実戦オンパレードの過酷なトレーニングながら、原点回帰の思いでボクシングを楽しめる刺激的な日々を送ることでまた一層強くなっていくことは間違いない。
虎に翼のボクサーへ。中谷潤人は至高を追い求める――。
<前編から続く>