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ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
「井上尚弥に判定で勝つのは無理」「あの下半身はすごすぎでしょ」長谷川穂積の視点…「計量から12kg増」ドヘニーの“超リカバリー”の影響は?
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2024/09/02 11:06
8月31日の記者会見で笑顔を見せる井上尚弥。「彼くらいになるとライバルは自分自身」と長谷川穂積さんは語る
逆の立場に立てば、井上は序盤、意外性のあるドヘニーの一発に注意して慎重に戦いたい。もちろんスタートから倒しにいくボクシングをするかもしれないし、様子を見ながら中盤以降のフィニッシュを模索するのかもしれない。井上の出方によっても試合の展開は変わってくる。
「+12.6kg」ドヘニーの“超リカバリー”の影響は?
もう一つ、ドヘニーにアドバンテージがあるとすればウエートも挙げられるのではないか。ドヘニーが前日計量から試合当日にかけて大幅に体重を上げる事実は、当日計量を実施する日本ボクシングコミッションの資料によって明らかにされている。昨年10月のラミド戦では55.2kgから1日で67.8kgまで上げた。その差はなんと12.6kg。この影響も気になるところだが……。
「あまり影響はないと僕は思います。増やせばいいというものではないですし。増量は体質の影響も大きいと思うんです。意識して増やしているかもしれないけど、ドヘニーが減量後、栄養分、水分を吸収しやすい体質なんだと思います」
ドヘニーと井上ではそもそもスピードが違う。その上、井上の肉体もどんどん成長を遂げ、万が一フィジカル勝負になる場面があったとしても、ドヘニーに体負けするとは想像しがたい。
ちなみに井上のネリ戦の当日体重は62.1kgで、前日+6.9kgで、階級を上げてから3試合連続で重くなっている。長谷川さんが「あの下半身はすごすぎでしょ」と舌を巻くのが井上の肉体だ。今回はスーパーバンタム級に上げて4試合目であり、本人は「今までで一番フィットしている」と体づくりに自信を持っている。
「彼くらいになるとライバルは自分自身」
ならばメンタルはどうか。WBCバンタム級王座を10度防衛した経験を持つ長谷川さんは「油断」についてトップアスリートならではの見方を示した。
「井上選手はこれまでこうした試合を何試合もやっていますから、油断はないでしょう。むしろキャリアを重ねてさらにスキはなくなっている。また、大橋ジムのチームとしての力も見逃せないと思います。周囲のムードは本人に伝わりやすいものですが、チームはそれを理解して“緩い”雰囲気を絶対に作らない。そういうところにも井上選手の強みがあります」