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「井上尚弥の圧倒的有利」下馬評は真実か?「パンチ力はネリより上」長谷川穂積が語る“37歳ドヘニーの怖さ”「失うものがない。不気味ですね」
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2024/09/02 11:05
スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥に挑戦するTJ・ドヘニー。長谷川穂積さんは「下馬評より難しい相手であることは間違いない」と分析する
長谷川穂積のドヘニー評「パンチ力はネリより上」
とはいえ、井上がネリ戦でキャリア初のダウンを喫した事実は見逃せない。これが今回の試合に与える影響はあるのか。これにも長谷川さんは「影響はない」と迷いなく答えた。
「打たれ弱くなってのダウンじゃないですから。交通事故みたいなものです。もし交通事故を起こした人がいたら、その後は注意して運転しますよね。それと同じで今回の井上選手はマックスの警戒心でいくでしょう。その結果、井上選手からはさらにダウンを奪いにくくなったと言えます。ネリ戦のダウンがドヘニーに希望を与えた? さすがにドヘニーも『ネリがダウンを取ったからオレもダウンが取れる』とは思わないんじゃないですかね」
ドヘニーは日本でもお馴染みの選手だ。2018年8月、後楽園ホールで岩佐亮佑に判定勝ちしてIBFスーパーバンタム級王座に就き、ニューヨークの初防衛戦で高橋竜平を下したのはご存じの通り。その後、王座から陥落し、連敗を味わうなど苦杯をなめた。だが、昨年6月に来日して大橋ジムの中嶋一輝を4回TKOで破りWBOアジアパシフィック王座を奪取。さらに初防衛戦で無敗のホープ、井上のスパーリングパートナーとしても知られていたジャフェスリー・ラミド(米)を初回TKOで下して井上の対戦相手候補に名乗りを上げた。今年5月の東京ドームではネリが欠場した場合のリザーブとしてリングに上がっており、日本で3試合連続のTKO勝ちを収めている。強打が自慢のサウスポーで、ニックネームは“ザ・パワー”だ。
長谷川さんのドヘニー評は決して低くない。
「井上選手の楽勝という見方があるかもしれませんが、下馬評より難しい相手であることは間違いありません。パンチがあるし、当て勘もいい。アウェーの日本でも強豪にしっかり勝っているように、どこでも力を発揮できる選手です。ダウンをしてもあきらめない、盛り返す力もあります。世界チャンピオンから陥落したあと、苦しい状態から5年かけて、37歳にしてここまではい上がってきた事実も見逃せません。精神的には間違いなく強いですね」
同じくサウスポーのネリ、その前のマーロン・タパレス(フィリピン)と比べたらどうなのか。
「僕はタパレスよりもかなり怖いと見ています。パンチがあるし、勝負強さもある。ネリとの比較はしづらいですが、パンチ力ではドヘニーのほうが上でしょう。あとはあの意外性ですね。蓋を開けてみないと分からない強さがドヘニーにはあると思います」