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冷静な大谷翔平が感情を出した“ある瞬間”…現地記者が見た「40-40サヨナラ満塁弾」のウラ側「あの男の一番すごいところは…」祝福ロハスの証言
posted2024/08/30 17:03
text by
阿部太郎Taro Abe
photograph by
Getty Images
千両役者。スーパースター。どの言葉も、陳腐に感じた。
8月23日のレイズ戦、同点の9回2死満塁。史上6人目の「40-40」がかかった最終打席。ドジャースタジアムに詰めかけた4万5556人のファンのつんざくような歓声の中、大谷翔平はその初球を狙った。低めのスライダーに腕が伸びる。打球は高く舞い上がった。中堅手のホセ・シリは「フェンスを越えるとは思わなかった」と振り返ったが、大谷の打球はいつものように、最後の一押しがあった。シリが必死に差し出したグラブの上を、打球は通過した。
「おとぎ話」の主役はそれでも冷静だった
史上最速の「40-40」達成は、サヨナラグランドスラムという劇的弾。「安打で勝てれば」と考えていたというデーブ・ロバーツ監督も試合後、興奮気味に語った。
「まるでおとぎ話のようだ。この場面は永遠に語り継がれる」
だが、おとぎ話の主役は高揚感もそれほどなく、冷静だった。ミゲル・ロハスとテオスカー・ヘルナンデスから手荒いウォーターシャワーを浴びて濡れ髪で囲み取材を受けた大谷は、本塁打を予感していたかとの問いに「そんな余裕はなかったですね」と頬をゆるませた。
記録達成については自身の哲学が詰まった言葉を口にした。
「それ(記録)が目的にならないように。盗塁もそうだし、しっかりと勝つための手段としてやりたい。目標はワールドシリーズに勝つこと」
大切なものは常に「記録」よりも「チームの勝利」
勝利より、大切な記録はない。大谷の言葉からはこの真意が見える。
前人未到の「50-50」に関しても、らしい返答だった。
「その数が増えるというのは、勝つ確率が高くなっていること。ここからもっと大事な試合が多くなる。自分の数字が上がってくると同時にチームが勝てるように頑張りたい」
今年5月、「自分の数字(成績)もほとんど見ていない」と話した。周囲から耳には入るだろうが、1打席1打席が勝負。いかに勝ちに貢献できるかが、大谷の大きな指標だ。