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「乗っていないと言うこと聞かない」愛馬と“初老”タッグで奇跡のメダル…“初老ジャパン”大岩義明48歳は苦境でも「ロスにも挑みたい」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byAFLO
posted2024/09/01 11:04
パリ五輪、相棒の「グラフトンストリート」と人馬一体の飛越を見せる大岩義明
「意識がよそへ行っちゃって自分勝手なことをしようとする隙があるんですが、そこをほったらかしにするのではなく、要所要所で僕の方に集中して、という合図を出す。あっちをキョロキョロしていたら『今はこれをやるんだよ』とタイミングよく伝えていけば、目の前のことに集中してくれる。ちゃんと扱えば本当に頼りになる馬なんです」
日常生活からコミュニケーションやスキンシップも大切にしてきた。
「今のが良かったのか悪かったのか、ということをはっきりしてあげることが大事。悪い時に修正されることはよくあるけれど、良かった時は何もしなかったりするでしょ。それでは分かりにくい。だから良かった時に明確にそれが伝わるように、ということは気を付けていました。その方法はライダーによって色々で、言葉で褒めたりスキンシップでも何でもいい。そうしていくうちに意思疎通も良くなるし、トレーニングでも次のステップに行けるようになるんですよ」
「グラフトンストリート」の愛称は英語でリスを意味する「スクワロル」。馬なのに「リスちゃん」と呼びかけていることになる。
「そういうことになりますね(笑)。でも確かにリスっぽいかなっていうところはあります」
人馬“初老”タッグの快挙
16歳は人間でいえば48~50歳というからまさに「初老」同士の名タッグ。出会いから五輪本番まで6カ月という短くも濃い絆が、人馬一体の快挙を呼んだ。
「初老ジャパン」のパリ五輪での激闘は、奇跡の連続だった。第2種目のクロスカントリーを終えて日本は3位。しかし、最終種目である障害馬術が行われる朝、北島隆三が乗る「セカティンカ」が馬体検査をクリアできずリタイアを決断し、リザーブの田中利幸と交代した。20点減点で3位から5位に後退したが、最終種目で戸本一真、田中ともに障害物を落とすことなく快走し“アンカー”の大岩に繋げた。