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「ジャッジ何やってんだ」判定不満の大ブーイング、パリ五輪“会場を一番沸かせた”19歳の日本人…HIRO10が記者に明かした「ヤバいっす」海外から予想外の反響
posted2024/08/23 17:11
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
もう勝ち上がれないことは決まっていた。いや、そもそもオリンピックに臨むにあたって勝ち負けだけを考えていたわけではないはずだった。
じゃあ何のために踊るのか。
パリ五輪ブレイキン男子のラウンドロビン、グループA最終戦。日本代表のHIRO10(ヒロテン)はここまでの2戦でLITHE-ING、Shigekixに1ラウンドも取れずに敗れていた。相手は昨年の世界選手権覇者VICTOR。これが最後のバトルだ。そう思うとHIRO10は自分の中に大きな感情が湧き上がってくるのを感じた。気づくと視界が涙でにじんでいた。
バトル中にもかかわらず、HIRO10は泣いていた。
「なんか涙になって…」
「これが自分のオリンピックでの最後の踊りだと分かっていて、悲しいとか悔しいっていう気持ちよりも、自分を支えてきてくれた人たちの気持ちを考えたら感謝の気持ちが出てきたんです。それがなんか涙になって……」
ここまでのバトルでも、フランスの観客は自分のパワームーブに大きな歓声で応えてくれた。バトルの合間にスマホを見ると、日本からもたくさんのメッセージが届いていた。
VICTORとのバトル、第1ラウンドも声援はHIRO10のものだった。開始早々、右肘を軸に跳ねて回るシグネチャームーブのワンハンドエルボーエア。単発ですら難しいのにそれを4連発、さらに両手でのエアを挟んでまた4連発。超大技に会場は沸きに沸いた。
だが、敵もさるもの。VICTORはその空気にのまれず落ち着いて応戦し、HIRO10はこのラウンドも1–8で落とした。
第2ラウンド。HIRO10はまずフロアの正面に立って両手を合わせ、感極まった表情で観客にハートマークを送った。
「めちゃくちゃ頑張ってオリンピックに向けて準備してきた集大成。特に最後のラウンドは一番気持ちが入りました」