NumberPREMIER ExBACK NUMBER
「最高の形でパリの風を浴びました」スケートボード“14歳の女王”吉沢恋がいま明かす金メダル秘話「本番では相談せず…自分の技を宣言」
posted2024/08/26 17:00
text by
梶谷雅文Masafumi Kajitani
photograph by
Kiichi Matsumoto
発売中のNumber臨時増刊号「パリ五輪 熱狂の記憶」に掲載の[14歳女王インタビュー]吉沢恋「狙って決めた完全優勝」より内容を一部抜粋してお届けします。
最高の形でパリの風を浴びました(笑)
スケートボード女子ストリートで2代目の五輪女王となった吉沢恋は、あの熱戦から10日少々経ち、彼女の地元である神奈川県相模原市のスケートパークを訪れた。幼少期から滑ってきた小山公園は原点の地だ。14歳という若さにもかかわらず、大人顔負けの落ち着きで言葉を紡いだ。
「予選で少し技のレベルを落としてっていうのは戦略的に必要だと思うけど、やっぱり最後はしっかり攻めて、全力を出して終わりたいと思ってました。最高の形でパリの風を浴びました(笑)」
7月28日の女子ストリート決勝。ランは2本ともフルメイク、レールでの大技を組み込む完璧な演技で会場を沸かせた。続くベストトリックでは1本目でミスするも2本目でキックフリップ・フロントボードスライドをメイク。その時点でメダル圏内の3位。ボードをコントロールしながら次々とトリックを繰り出す姿からは想像できないが、実は本番までの数日の間に想定外のアクシデントに見舞われていた。
「2日目の練習で左足首を怪我してしまいました。でも雨が降ってコースで練習ができない日があったから、その間に選手村でずっとケアを受けていました」
スケートボードにおいて足首は命とも言える重要な部分であり、特に彼女の場合は左足が前に来るレギュラースタンス。ボードを縦回転させるキックフリップの際には怪我をした左足首の動きが不可欠となる。
「だからキックフリップするときが痛くて。キックフリップ・フロントボードスライドをしたかったけどもう無理かなと思いました。でも意外と雨が続いて治すことができて。みんなも十分に練習できてなくて完璧な状態でのスタートじゃなかった分、そこまで緊張しませんでした。ダメでも諦めがつく、楽しんでやろうって思いました」