「ギリギリの次点ということが分かって……でも、なんていうか『やっぱり五輪ってそういう舞台だよな』と妙に納得したというか。『全力を尽くした結果の“ご褒美”として、オリンピックへ出場出来たら最高だなぁ』くらいに思っていたからこそ、『ラッキーで行ける舞台じゃないな』というのは改めて感じました。そういう甘い、弱い部分がある中で行けるような場所ではない。確かに今回、あとちょっとまでは来たけど、そのあとちょっとの難しさは感じました」

　いまは来年の東京世界陸上で、日本女子走高跳選手としては2013年以来となる世界大会出場へ向けてトレーニングを重ねている。指導する醍醐奈緒美コーチは自信を見せる。

「筋力・走力はかなりついたので、あとはそれをどう跳躍に繋げるのかが一番の課題です。来年に向けて大きく変えるというよりは、これまで積み上げたものをさらに伸ばしていく感じになると思います」

１m90cmの大台は…「スッと跳んできたい」

　目下の目標は繰り返し語っている「1m90cmを跳ぶこと」だ。本人もこう決意を語る。

「跳べる実力自体はあると思うので、あとは意識の中での壁ですよね。1m90cmが大台だという意識が問題で、1回跳んじゃえば変わると思うんですけど、それが難しいですね。海外で1m90cm台をバンバン飛ぶ人たちに混ざった大会で、スッと跳んできちゃいたいと思っています。それが跳べればまた、自然と次の数字も見えてくるのかなと」

　パリ五輪での女子走高跳の予選通過ラインは1m92cm。まさにその「1m90cmの壁」を越えることさえできれば、世界でも十分に勝負できることも分かった。

　来年の東京世界陸上では、出場はもちろん、「記憶に残る跳躍」を期す。

「まずは日本人女子の走高跳選手が、世界の舞台で代表として出場していることを知ってもらわないといけない。そのうえで、来年の世陸は地元開催ということで、注目してもらえるからこそ結果も出さなきゃいけない。秋からはまた世界陸上に向けた海外転戦も始まるので、しっかり結果を残して行きたいです」

　一方で、高橋が現れるまでここ十数年、前述の通り日本の女子走高跳種目は低迷期にあったと言っていい。ではそんな状況の中で、いかにして高橋は「世界への扉」に指をかけることができたのだろうか？

＜次回へつづく＞

#2に続く

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