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メダルまで0.12秒…“世界から最も遠い”110mハードルで村竹ラシッドがパリ五輪決勝ゴール後に明かした思い「喜んでいいのか分かんないっすね」
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byRyosuke Menju/JMPA
posted2024/08/14 06:00
パリ五輪110mHで日本人初の決勝進出、5位入賞を果たした村竹ラシッド。ゴール後には喜びと悔しさが入り混じった表情をみせた
現地時間8日の決勝では、村竹は一番端の9レーンに入った。優勝候補のホロウェイは6レーン、前回東京五輪覇者のパーチメントは2レーンに入った。
「決勝では世界の強豪相手に全身全霊でぶつかりたい」
その言葉通り、号砲と共に飛び出した。
スタートで先行したのはホロウェイだ。0.104と抜群のリアクションタイムで飛び出し、一気にリードを奪った。
村竹は1台目を当てたものの踏ん張って2台目、3台目を越え、その時点でホロウェイ、4レーンのロバーツに続いて3番目に上がる。その後も6台目までいいリズムで跳んでいたが、7台目にぶつけると減速し、最後は体を大きく傾けてフィニッシュした。
「自分のレーンしか見ていなかった」
何着だろう。
そんな思いを胸に村竹ラシッドは少し口を開け、大きく息をしながら大型スクリーンを見つめた。
13秒21の5着という結果が出ると、軽く頷き、係員に促されてスタジアムを去った。
「左の(レーンの)ことは全然分かんなくてゴールした時はメダルは無理かなって感じですね。ちょっとよくて4位かなって思いました」
準決勝を着順ではなくタイムで拾われて8番目で通過したため、外側のレーンに振り分けられた。
一方、金メダルをとったホロウェイは6レーン、2位のロバーツが4レーン、3位に入ったジャマイカのブロードベルは2人の間に入る5レーンと互いが見える場所にいた。
ブロードベルは「スタートで出遅れて『やばい』と思って1台ずつ丁寧に跳んだ。ダニエル(・ロバーツ)が隣にいたので、いい目印になり競うことができた」と話したが、8台目からフィニッシュまでのタイムはロバーツとブロードベルがホロウェイを上回っている。
二人は最後は半ばダイビングするようにフィニッシュに入ったが、ハードルは競う相手がいることでタイムが伸びる種目でもある。
東京世界陸上での逆襲を誓う
「実力も余裕もなかったですけど、色んな試合を経て決勝進出が当たり前という風に思えれば、メダル争い、いや、優勝に対して、もっともっと余裕も出てくると思う」
優勝争いと言い直したところに村竹の覚悟を感じる。