だが、今シーズンは当たり前のように12秒台をマークしている。パリ五輪への挑戦を通して、確実に成長を遂げたと言える。

　しかしながら、パリではもちろん反省点もあった。

「調子は良かったので、決勝には進めなくても、自己ベスト近く、そして、来年の東京世界選手権の標準（※参加標準記録のこと：12秒73）が切れればいいなっていう気持ちで走ったが、タイムがイマイチ上がり切らず、そこに関しては後悔が残る結果となりました」

　こんなあくなき向上心が、まだまだ彼女を成長させるだろう。

「まだまだ戦国時代は続くと思います」

　日本国内にいる強力なライバルたちも、田中の成長には欠かすことのできない存在だ。

　現在、日本に12秒台ハードラーは6人。日本記録保持者の福部や寺田、青木益未（七十七銀行）といった選手たちと切磋琢磨しながら、田中は力を付けてきた。

同じく準決勝に進出した福部も抜群のスタートで会場を沸かせた　©Ryosuke Menju/JMPA

「寺田明日香選手が（女子ラグビー参戦を経て）陸上に帰ってきて、12秒台の壁を越えて、そこから私達も引きずられるように、どんどんどんどん競技レベルが上がりました。それで代表になるのがしんどいんですけれど。そういった経験がオリンピックで落ち着いたレースができたことに繋がっている。これからもまだまだ戦国時代は続くと思いますが、しっかり勝ち抜いて頑張りたい」

　来年の東京世界選手権、そして、4年後のロサンゼルス五輪に向けて、国内でも厳しい戦いが再び始まるが、田中は代表の座を譲るつもりはない。そして、再び立つ世界の舞台で、今回のパリ以上の走りを見せるつもりだ。