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スタート前の「笑顔」も話題に…女子ハードル田中佑美(25歳)がパリ五輪“40人中39位”の崖っぷちから準決勝まで進出できた「必然のワケ」
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byRyosuke Menju/JMPA
posted2024/08/13 11:01
40選手中39番目のランキングからの参加だったが、見事敗者復活ラウンドを経て準決勝進出を決めた女子100mハードルの田中佑美(25歳)
ハララやコザックとの関係はというと……その答えはこうだ。敗者復活ラウンド後に田中はTBSスポーツチャンネルのインタビューでこんなことを話していた。
「(敗者復活ラウンドで同じ組を走った選手たちは)ヨーロッパに行った時に一緒に走ることが多かったメンツだったので、リラックスできた」
田中は、パリ五輪の参加標準記録突破を狙いつつも、ワールドランキングでの出場を目指して、ヨーロッパやオーストラリアに遠征し試合を重ねてきた。
ワールドランキングは有効期間内に大会で獲得したポイントの平均値で順位が決まる。大会ごとにカテゴリーがあり、高いポイントを得るには高いカテゴリーの大会に出る必要があった(もっとも順位が悪ければ元も子もないが…)。そのために、田中は積極的に海外遠征を行なっていた。
いつしか海外の選手の知り合いが増え、インスタグラムなどもフォローし合っているという。つまり、そのチャレンジには、ワールドランキングに必要なポイントを積み上げること以上の“副産物”があったというわけだ。
積極的な海外遠征で得た「慣れ」
アーバンスポーツやウィンタースポーツでは、国籍に関係なく、アスリート同士が仲良さそうに談笑している場面をよく目にする。それに近い関係性を、海外レースの転戦を通して、田中も築き上げていたのだろう。
“緊張しやすい”と自認している田中が、初めての五輪の舞台で力を発揮できたのは、こういった背景もあった。
かつて日本人にとって夢の記録だった12秒台を田中が初めてマークしたのは、社会人3年目の昨年4月のことだった。
「出るとは思っていなかったので驚いた」と本人も振り返るように、それは予期せず“出てしまった”記録だった。実際に、その後も立て続けに12秒台をマークしたものの、昨年は13秒かかる試合のほうが多く、安定して12秒台で走れていたわけではなかった。