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スタート前の「笑顔」も話題に…女子ハードル田中佑美(25歳)がパリ五輪“40人中39位”の崖っぷちから準決勝まで進出できた「必然のワケ」
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byRyosuke Menju/JMPA
posted2024/08/13 11:01
40選手中39番目のランキングからの参加だったが、見事敗者復活ラウンドを経て準決勝進出を決めた女子100mハードルの田中佑美(25歳)
田中がパリで走った3本のレースは次のような結果だった。
・予選 2組5着 12秒90
・敗者復活ラウンド 3組2着 12秒89
・準決勝 1組7着 12秒91
田中の自己記録は12秒85だ。自己記録には届かなかったものの、予選の後に「世界大会で自分の力を出すというチャレンジはクリアした」と話した通り、五輪の舞台で持っている力は発揮した。
また、日本人の五輪最高記録は、福部が今大会の予選でマークした12秒85が新たな記録となったが、それまでは寺田の12秒95だった。つまり、田中もまた、3レース全てで、従来の五輪における日本人最高記録を上回った。
昨年のブダペスト世界選手権は、田中にとって初めてのシニアの世界大会ということもあって、雰囲気に飲まれてしまった。
「スタートで出遅れてしまって、歯が立たないレースをした」
世界のトップハードラーに力を見せつけられたばかりか、他の試合では絶対にしないミスをしてしまい、“何しに来たんや”という後悔が胸中に残った。
敗者復活ラウンド後の「印象的なシーン」
田中にとって、今回のパリ五輪はその雪辱の舞台でもあった。今度は「自分のやりたいことができた」ときっぱり言い切ることができた。
敗者復活ラウンドではこんな印象的なシーンがあった。
それはフィニッシュ後のこと。田中は2着に入ったことを確認すると、1着のロッタ・ハララ(フィンランド)のもとに駆け寄り、抱き合って健闘を称え合った。
さらには、敗れた中国の呉艶妮やハンガリーのルツァ・コザックも2人のもとに駆け寄り、ハララと田中を祝福していた。自分たちは準決勝進出を逃したのにもかかわらず、だ。
中国の呉は、昨年のアジア選手権でフライング騒動があり、今年のセイコーゴールデングランプリでは優勝を飾っている。いずれの大会にも田中も出場しており、田中と関わりがあるのは知っていた。