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悔しい敗戦も「楽しい大会」…“驚異の16歳”張本美和が早田ひな、平野美宇、そして兄に支えられて見据えた、中国との激闘の「4年後」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byNaoya Sanuki/JMPA
posted2024/08/12 17:02
卓球女子団体戦決勝戦、張本美和は第3試合シングルスに敗れて初の五輪を終えるも「楽しい大会でした」
そこから立て直せたのは、早田、平野からかけられた言葉のおかげだった。
「いいよ! 楽しんで、頑張って!」
それを力とした。
「安心して思い切って」
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「先輩方にたくさん声をかけてもらったので、思い切りプレーすることができました」
伸びやかにプレーした1回戦と準々決勝にも、先輩たちの支えがあった。1回戦の後にはこう語っている。
「平野選手と早田選手が(第1試合のダブルスで)勝って回してくれたので、安心して思い切ってやればいいと思いました」
1回戦からダブルスに出場し続けた早田には、張本そして平野へのこんな思いがあった。
「私もダブルスをしっかり獲らないと、あとのふたりに緊張が出てくるので、ふたりの負担にならないようにしたいと思っています」
プレーで、声かけで、早田、平野が支えてくれたことが力になった。すべての試合が終わり、SNSにこうつづっている。
「準決勝の第2試合で負けてしまい、あの時は本当に今までにないぐらい苦しかったです。負けて悔しいより、自分らしくないプレーばかりで“自分は何をしているんだろう”と、とても苦しかったです」
「どう切り替えれば良いか、短時間で切り替えたくても簡単にはいきませんでした。でも、チームの先輩である平野選手、早田選手に“思い切って!”その一言に救われました」
兄とともに戦った幸せ
もう一人、大きな力を与えてくれたのは兄の智和だった。
「パリでお兄ちゃんと一緒に戦うことができて、本当に心から幸せで嬉しかったです」
「お兄ちゃんの試合を見てたくさん感動したし、こんなにも素晴らしいお兄ちゃんがいて私は幸せものです。本当にありがとうございました!」
小学生の頃は活躍する兄の引き合いに出されることに葛藤し、卓球に熱心になれない時期もあった。それでも兄が卓球に打ち込み成長していく姿に、自身も決意を固めて郷里を離れた。