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「既読にならなかった父のLINE」スケボー堀米雄斗の父親が明かす…父と息子の“令和な親子関係”「ユウトは親が付いてるイメージが嫌なんですよ」
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2024/08/05 11:05
奇跡的な大逆転劇を見せたスケボー堀米雄斗(25歳)。あの5本目の後、ナイジャ(米国)とハグ
ただ、金メダリストとなった堀米が、その立場と愛するスケートボードの狭間で葛藤するのを見守るうちに、息子の滑る姿をきちんと観なければという思いも抱くようになった。
大逆転での五輪出場を決めたブダペストでの6月の最終予選のときもそうだった。結果次第ではパリ五輪挑戦の道がここで潰える可能性があった大会だ。
「最初は近所の松屋に行ってご飯を食べて、食べ終わった頃には試合も終わってるだろうと思ってたんです。でも、さすがにこれは見てやらないとかわいそうだと思ってね」
意を決して松屋に行く途中で引き返し、NIKEから発売された堀米家の家紋などがデザインされたオリジナルTシャツに着替えた。態勢を整えてモニターの前に座り、配信される映像をハラハラしながら見つめた。
「暴走族のリーダーに親がついてたらおかしいでしょう?」
オリンピック観戦に向けては、大の飛行機嫌いというまた別の障壁もあったが、そこはぐっと堪えて、堀米の母、77歳になる祖母、弟2人と一緒に5人でパリを訪れた。
「おばあちゃんもいろいろと体が悪いんで飛行機15時間は無理だと断ろうと思ったんです。でも、雄斗が来てほしいっていうのを察して頑張って来ました」
元々は亮太さんもスケーターだ。堀米に手ほどきをしたのも、子どもを連れていけば自分が滑る口実ができるからというのがそもそもの理由。古き良きスケートボードビデオを愛し、スケーターとしての価値観を堀米に伝えてきた。
しかし、父には仕事もあり、いつも一緒にいられるわけではない。息子はひとりで電車賃をもらってパークに通うようになり、そこで周囲の大人たちにかわいがられ、父子で一緒に滑る機会は減っていった。
「雄斗はそういう育ち方をしてきたし、根はコテコテのスケーターなんですよ。頭ではこっちの言うことが正しいと分かっていても、あんまり親には口を出されたくないじゃないですか。親がついてるっていうイメージも嫌なんだと思います。極端な話だけど、暴走族のリーダーに親がついてたらおかしいでしょう?」
「ああ、やっちゃった」あの堀米ダンクがない…
自分が同じ立場でもそう思うだろう。亮太さんはそれが分かるから、2、3週間に1度、新しいトリックの話やメンタル的なことをメールするぐらいにとどめてきたし、それを息子がどう受け取るかも任せてきた。
だからパリ入りしてからも特に連絡はしなかった。