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「既読にならなかった父のLINE」スケボー堀米雄斗の父親が明かす…父と息子の“令和な親子関係”「ユウトは親が付いてるイメージが嫌なんですよ」
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2024/08/05 11:05
奇跡的な大逆転劇を見せたスケボー堀米雄斗(25歳)。あの5本目の後、ナイジャ(米国)とハグ
2日間延期されたスケートボード男子ストリート。7月29日はコンコルド広場に応援に向かうため、亮太さんはブダペストのときと同じ堀米Tシャツを選んだ。こちらも堀米モデルの「ナイキSBダンク LOW×Yuto」を履こうと思ったら、息子からもらった大事なシューズが見当たらない。
「ちゃんと荷物の中に入れたか?」と家族に聞いてみるが見つからない。よくよく考えてみたら、空港からの移動で使ったUberの中に忘れてきたようだった。
「いやあ、やっちゃったよって。またやらかしたなあと思いました」
タクシーの運転手を生業としておきながらUberの中に置き忘れるなんて……。今頃、パリの街角では、金メダリストモデルのダンクが手に入っちゃったよと喜んでいるドライバーがどこかにいるだろう。
仕方がないので、亮太さんはランニング用に持ってきたただの黒いシューズを履いて応援に出かけた。
「あいつは雑草。下町の雑草ですよ」
ランを4位で終えた堀米は、ベストトリック1本目を成功して3位に浮上。しかし、その後は失敗が続く苦しい展開になった。
「1本目だけ決めて残り決められないってコンテストでよくあるパターンなんですよ。それでも最後にまだ何かありそうだと思ってみていました」
長くスケートボードのコンテストや堀米の滑りを見てきたからこそ感じる不安と期待。最後のベストトリック5本目でついに成功。逆転での金メダルを手にした。
メダルセレモニーの準備が進む会場で、亮太さんは「いやあ最後は思わず立ち上がっちゃいましたよ」と興奮気味に語った。
「みなさん雄斗に対してあまり苦労してないイメージを持たれる方も多いけど、僕からすれば何度も潰されている。頂点まで行って突き落とされて、また挑戦して強くなって。だからどんなに有名になってもあいつは雑草。下町の雑草ですよ」
「怒ってくれる人がアメリカにはいない」
亮太さんと古くから親交のある日本代表の早川大輔コーチは、昨年10月の五輪予選ローマ大会の際に、久しぶりに堀米と食事をする時間が持てたという。
まさに結果が出ずに苦しんでいた時期。早川コーチは金メダリストとなった堀米の孤独に気づいた。