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バドミントン渡辺勇大&東野有紗が銅 “わたがし”ペアとフィギュア“りくりゅう”ペアの共通点「1+1を2より大きくする」2人の「相性以上」のもの
posted2024/08/03 20:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
勝負が決した瞬間、感情があふれた。
8月2日、バドミントン混合ダブルス3位決定戦が行われ、渡辺勇大、東野有紗が日本バドミントン界初の連続表彰台となる銅メダルを獲得した。
第1ゲームを先取して迎えた第2ゲーム、デュースにもつれこむ中、22点目が入ると東野はコートに倒れこみ、渡辺はひざまずいて両こぶしを固く握りしめると、そのままコートに伏せた。
起き上がった両者はハグして互いを称える。東野の目には涙があった。
その光景は、あらためて渡辺と東野が築いた強さと歩みを思い起こさせた。1人ではなく2人だからこそ、成し遂げられた理由があった。
『余り者同士』のペアが起こした奇跡
渡辺と東野の出発点は、中学時代にある。富岡一中の先輩後輩の2人は、東野が中学3年、渡辺が中学2年のときバドミントン部全体で海外に遠征。そのとき初めてペアを組み、大会の混合ダブルスに出場した。
それは「たまたま」だった。
「男女、強い者同士で組まされるじゃないですか。余った2人、最後に監督から発表されたのが私たちだったんです。『余り者同士』ですね(笑)。練習もしないでほぼぶっつけ本番」(東野)
ところが予想外の好成績をあげた。
「お互いに無駄な動きがなくてスムーズにローテーションできるんだ、と思いました」
渡辺も当時をこう振り返っている。
「最初から息が合っていました」
でも、どうして合ったのかは分析できない。東野は「奇跡ですね」と表現する。
でも奇跡は、何もしなければ1回きりのものだ。2人が転機と言うのは、2018年、コーチに就任したジェレミー・ガンから教わったことにある。