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「44秒台前半は出せる」メダリスト集う“虎の穴”で修行中…陸上400m「32年ぶり五輪決勝」狙う192cmの大器・中島佑気ジョセフ(22歳)とは何者か?
posted2024/08/04 11:01
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by
Asami Enomoto
「生まれ育った環境を捨ててまで、アメリカでやりたいことがあって、挑戦をしてきた。アメリカに行った時点で“世界で勝負する”“陸上1本で勝負していく”っていう覚悟を決めていた。挑戦して得たことをしっかり世界の舞台でぶつけたいと思います」
堅い決意を表明したのは、陸上競技・男子400mで世界に挑む中島佑気ジョセフ(富士通)だ。
大学卒業後にアメリカに渡った男子マラソンの大迫傑(Nike)、チェコで力を付け世界一になった女子やり投の北口榛花(JAL)のように、海外を拠点とする日本人の陸上競技選手が少しずつ増えてきた。中島もその一人。とはいえ、まだまだ絶対数が多いわけではなく、拠点を移す決断を下すには、並々ならぬ覚悟が必要だったはずだ。
名門・南カリフォルニア大を練習拠点に
中島は昨年11月に単身でアメリカに渡り、陸上の名門・南カリフォルニア大学を練習の拠点としている。
日本陸連はたびたび同大学に選手を派遣したり、合宿を行ったりしてきたが、中島も昨年2月から3月にかけて南カリフォルニア大学で練習を積んだ。「その際の感覚がすごく良くて、手応えをつかんだ」ことが、のちに拠点を移すきっかけになった。
東洋大の学生だった昨年11月から今年3月までは、安藤財団の支援を受けてアメリカに滞在。今年4月に富士通に入社してからも、引き続きアメリカでトレーニングを積んでいる(※ちなみに北口も当初は安藤財団のサポートを受けてチェコで武者修行した)。
「マイケル・ノーマン選手がいますし、今年からはフレッド・カーリー選手も入った。世界のトップレベルの選手が集まる環境で、自分がどこまでやれるのかを見たかった」
こう話すように、中島がトレーニングをともにする顔ぶれは錚々たるものだ。日本人の母を持つマイケル・ノーマンは、オレゴン世界選手権男子400m金メダリスト。フレッド・カーリーは、オレゴン世界選手権男子100mの覇者で、東京五輪でも銀メダルを獲得している。その他にも、東京五輪男子400mハードル銀メダルのライ・ベンジャミンら、世界大会のメダリストがずらりと揃う。指導を仰ぐコーチのクインシー・ワッツ氏は、1992年バルセロナ五輪の男子400m金メダリストだ。