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「44秒台前半は出せる」メダリスト集う“虎の穴”で修行中…陸上400m「32年ぶり五輪決勝」狙う192cmの大器・中島佑気ジョセフ(22歳)とは何者か?
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byAsami Enomoto
posted2024/08/04 11:01
陸上400mで日本人22年ぶりの五輪決勝進出を狙う中島佑気ジョセフ。昨年からは米国を拠点にレベルアップを重ねている
厳しい環境に身を置き、時には孤独感を覚えることもあったというが、中島のあくなき挑戦は「成長過程で必要なこと」だった。
今、日本の男子ロングスプリント界が活況だ。
中盤の走りを得意とする佐藤拳太郎(富士通)、前半型の佐藤風雅(ミズノ)、そして終盤に追い込む中島と、異なるタイプの3人の選手が切磋琢磨し合っている。
中島は勝負強さが光る。現に日本選手権は連覇中だ。
今年の日本選手権は、アキレス腱や右脚のハムストリングスに不安を抱えながらも、予選から45秒16の好記録をマーク。決勝は雨に見舞われ記録は45秒51にとどまったが、先行する佐藤風雅をラスト100mでかわし、しっかりと勝ち切っている。
ただ、記録の面ではそのW佐藤がリードする。
昨夏のブダペスト世界選手権では、男子400mの予選で佐藤拳太郎が、32年ぶりの日本記録となる44秒77を樹立。佐藤風雅も準決勝で日本歴代3位の44秒88をマークした。これまで日本人の44秒台は高野進しかいなかったが、現役選手が一気に2人も44秒台に突入した。中島も日本歴代5位となる45秒04で走ったが、44秒台にはまだ届いていない。
「44秒台前半ぐらいは出せるのかな」
しかしながら、中島には44秒台への心理的な障壁はない。むしろ条件さえ整えば、日本記録を大幅に塗り替えられる手応えがある。
「44秒台前半ぐらいは出せるのかな。というか出しても自分でも全く驚きません。それぐらいの力をつけてきたので。本当に過酷な練習を乗り越えてきました。チームメイトと走る時には、毎回“絶対に離されない”っていうプレッシャーがありますし、なんなら“勝ってやる”ぐらいの気持ちを持って、レベルの高い競争の中でやってきました。自分がやってきたことを出せば、44秒中盤とか前半が出ても、予想の範囲内。それは、僕もチームメイトも共通認識です」
中島はきっぱりとこう言い切る。世界のメダリストが練習相手なのだ。そんな環境に身を置いて、走りを磨いてきたからこその自信だ。