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谷川萌々子衝撃ゴールの裏で“なでしこ号泣ミックスゾーン”「また自分が壊しちゃうんじゃ」PK失敗・田中美南がタオルで涙を、取材記者も思わず…
posted2024/07/31 17:06
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph by
Naoki Morita/AFLO
これが映画ならタイトルは“号泣ミックスゾーン”だろう。ニューヒロイン谷川萌々子が鮮やかに誕生したブラジル戦、ミックスゾーンは思いがけず涙であふれていた。
ミックスゾーンに現れた選手の手にはタオルが
試合は、日本が劇的な逆転劇を演じた。0−1で追いかける時間帯が続き、80分に投入された谷川が後半アディショナルタイム2分にまずは仕掛けからPKを誘発。これを主将・熊谷紗希が決めて同点とすると、その4分後には相手のミスパスをカットした谷川が思い切ってミドルシュートを放つ。
「ブラジルのGKは結構前に出てるから狙っていけ」
試合当日、父に言われた言葉通り、迷いなく振り切り、きっちり枠に収めて逆転に成功。8分間もあったアディショナルタイムで明らかにペースダウンしたブラジルをどん底に突き落とした。
日本は仮にこの試合に0−1で負けていても、この日のナイジェリアが0−1でスペインに敗れているため、グループC3位となり決勝トーナメント進出の可能性をまだ残していた。とはいえ、勝ち点0を一気に勝ち点3へと伸ばした事実は、あまりにも大きい。
試合後ミックスゾーンに現れた何人かの選手たちは、どういうわけか手にタオルを持っていた。
鈍感な私は汗を拭くためかと思ったが、スペイン戦で号泣していた高橋はながタオルを手に持っているのを見て、汗ではなく涙を拭うためだと気付いた。勝利したのに、まだグループステージも1試合残っているのに何を泣く必要があるのだろうか。単純に疑問に思った。
「すいません…また自分が壊しちゃうんじゃないかと」
そのうちに現れた田中美南が、記者陣の前に立つ。だが、どうにも言葉が出てこない。
「あ……すいません」
文字通り涙が溢れてくると、見ているこちらも涙を誘われそうになる。分厚いタオルで涙をぬぐい、田中は必死に思いを言葉にしていく。
「また自分が壊しちゃうんじゃないかと思って……。一生懸命やっていたんですけど……仲間が頼もしかったです。勝てたこと、本当にみんなに感謝しています」
“また自分が壊す”とはどういうことか。