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「うおぉぉ」「やべぇぇ」スケボー堀米雄斗、伝説の瞬間…現地の日本人記者も絶叫していた「ホリゴメの脳ミソはヤバいだろ?」海外記者も大興奮のパリ
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2024/07/30 18:22
スケボー堀米雄斗の奇跡的な大逆転。本人も演技直後、興奮した表情を見せた
スケートボードのデモンストレーションなどでは、失敗を繰り返しても何度も挑戦し、周囲も後押しし、最後に成功させれば喝采を浴びる。コルダノが見せたのはオリンピックの場でも失われないスケートボード本来の精神なのだろう。
そこまでベストトリックを1本も決められていなかったマティアス・デルオリオもようやく着地を決めた。さらに盛り上がる場内。どんな結末なのかはわからないが、クライマックスが近づいているのは間違いなかった。そして彼らの得点が出るまでの合間など、わずかな隙間時間に堀米は何度も実際のセクションでトリックの確認を行っていた。
あの瞬間、記者もみんな絶叫していた
そして堀米の順番になった。場内のMCが「WOW!WOW!」と客席に呼びかけて一瞬の間を取り、それに応えて大きな歓声が上がる。
そのとき、堀米は静かな世界の中にいた。耳にイヤホンはつけていたものの、音楽はあえて流していなかったという。
「今までやってきたこと、練習してきたこと、できる限り自分に集中しようとしていた。泣いても笑っても最後。悔いの残らないように、何が何でも乗るっていう気持ちだけは忘れないで滑ろうと思ってました」
最後もノーリー270ブラントスライド。しかも、板と車輪部分ががっちりとレールにはまり、長くきれいに滑り降りた。着地も完璧。決まった。申し分のない完成度だった。
歓声もすごかったはずだ。はずだ、というのは、自分も大声を出していたからよく覚えていない。周りの記者たちも叫んでいた。立ち上がって頭を抱えている記者もいた。みんながそれぞれに驚きの反応を示していた。
97.08と得点が表示された瞬間にまた大歓声。堀米自身は「メダルはいけるけど、1位は取れるとは思ってなかった」というものの、ここで逆転してトップに立った。
最後に見せた“神対応”
続く白井は着地しかけたものの、惜しくも乗り切れなかった。ナイジャもメークできなかった。最後はイートン。レッジにわざわざワックスを塗り直して万全の準備を整える姿に勝利への執念がにじんでいた。しかし、渾身のトリックを決めることはできなかった。
失敗して失敗して、土壇場で成功させる。そもそもパリオリンピック出場もそうだった。選考レースで大きく出遅れ、最終戦の優勝でぎりぎり滑り込んだのだ。東京オリンピックも逆転での金メダル。そんな劇場型の滑りが再び発揮された。
堀米は「東京オリンピックから地獄のような3年間だった」と言った。金メダルを受け取ったとき、場内のモニターに映った笑顔は何とも言えない良い表情だった。これでその苦しさから解放されただろうか。