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女子800m「19年ぶり日本新」16歳の新ヒロイン・久保凛の“異質さ”とは? 過去との比較で分かった“意外な事実”「実はドルーリー朱瑛里とも…」
posted2024/07/17 17:02
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by
Asami Enomoto
日本代表選手が出揃い、パリ五輪への気運が高まるなか、7月15日に日本陸上界に衝撃が走った。
高校2年生の久保凛(東大阪大敬愛高)が、女子800mで日本人として史上初めて2分を切り、1分59秒93の日本新記録を打ち立てたのだ。
久保は今年の日本選手権チャンピオン。その決勝の舞台でマークした2分3秒13が自己記録だった。それを一気に3秒以上更新した。
「今年中に高校記録(2分2秒57)を切って、来年は1分台というタイムを目指したい」
日本選手権の際に今後の目標タイムを問われた久保はこう話していたが、来年どころかそのわずか15日後に1分台に突入することになるとは、誰も思いもしなかったのではないだろうか。
陸上専門誌の速報記事によると、このレースでは高校記録更新が第一目標だったという。おそらく久保自身にとっても想定以上で、予期していなかったタイミングで成し遂げた快挙だった。
しかもその2日前には、女子4×800mリレーで、東大阪大敬愛高チームとして8分33秒77の日本記録を樹立しており、久保は2種目の日本記録保持者となった。
19年前、前日本記録保持者との違いは?
久保の快挙を伝える報道と共に、前日本記録保持者の杉森美保の名前も多く目にした。杉森は現在、元マラソンランナーの佐藤敦之(中国電力監督)と結婚し、現姓は佐藤となっている。その杉森が2005年に打ち立てた記録は、19年もの間、日本記録であり続けた。つまり、久保が生まれる2年以上前に出された記録というわけだ。
一方で同じ800mという種目を専門としていても、杉森と久保とでは全くアプローチが異なる。
久保は800mを主戦場としながらも、長距離走もこなし、3000mでも9分17秒78と高校トップクラスの記録をもつ。そもそも中学から陸上を本格的に始めるきっかけになったのも、小学生の頃に地元の駅伝大会で活躍したからだった。
同学年にはドルーリー朱瑛里(津山高)がおり、当時中学3年のドルーリーが脚光を浴びた2023年の全国女子駅伝では、3区でドルーリーに次ぐ区間2位と好走している。今年1月の同駅伝でも、大学生や社会人も走る7区で高校1年生ながら区間6位で走った。久保は長距離ランナーとしても、きらりと光る才を持っている。