濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
水着グラビアも披露のアイドル路線から急転換…素顔は“オラオラ”、スターダムのベルトも獲得した岩田美香の渇望「総合格闘技かキックにも」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2024/07/14 11:01
安納サオリを破り、ワンダー・オブ・スターダム新王者となったセンダイガールズの岩田美香
岩田は敗れた安納に、毎日LINEを送った
岩田が仙女のベルト(センダイガールズワールドシングルチャンピオンシップ)を巻いたのは昨年9月。チャンピオンとして橋本やチサコに負けない存在感を出すことがテーマになった。ベルトを奪った相手はイギリスのミリー・マッケンジーだったから、岩田にはまだ“仙女最強”というイメージがない。いずれ団体内の防衛戦で実力を示す機会が必要だと考えている。
一方で、橋本やチサコほどには“強さ”が全面に出ていないことをプラスに捉えてもいる。
「橋本がベルトを巻いた時には“盤石”な感じがしますよね。誰にも負けないだろうって思えるチャンピオン。私はそうじゃない。“もしかしたら負けるかも”と思うからこそ応援したくなる、感情移入できるとファンの人から言われたことがあります。見る人の感情を揺さぶることができるなら、それも魅力なのかなと。だからベルトを巻いていても、自分は挑戦者ですね」
7月15日、仙女の後楽園ホール大会では岩田と安納のリマッチが決まった。岩田はスターダムのベルトだけでなく、仙女のベルトもかけた2冠戦をアピールした。
「安納はスターダムのベルトを取り返しにくる。そこで私はもう一歩踏み込んでやろうと。これも自分の中での挑戦ですね」
代々木大会で敗れ、ベルト奪還の闘志も失っていた安納に、岩田は毎日LINEを送った。お前はそんなもんじゃないだろうと“敵”を鼓舞したのだ。その関係性は岩田と安納ならではのもの。岩田美香にしか作ることのできないチャンピオン像がそこにある。
岩田美香のピュアでシンプルな思い
仙女の道場は、仙台駅から地下鉄で一駅の場所にある。選手たちは朝から夕方まで練習、道場の周囲をランニングするとよく声をかけられるそうだ。
団体として農業にも取り組み「農姫米」を販売。岩田は高校が農業科だったため、米作りの知識もあるという。
「そういうところを含めて、仙女に入ったのは運命じゃないかって思います。仙台という土地が凄く好きですね。ずっとここで暮らしたい」
福岡のプロレスファンが仙台の団体に入門してチャンピオンになり、業界最大手のスターダムとベルトを争っているのだから面白い。プロレスラーとしてやってみたいことの中には、プロレス以外の試合もある。
「総合(格闘技)かキックボクシングの試合にも出てみたいんですよ」
実現したら大変なことだ。キャリア10年目、団体の頂点のベルトを巻いた選手なのだから、若手の腕試しとは意味が違う。それこそリスクが大きい。けれど岩田の思いはピュアでシンプルだ。
「強くなりたいし、強い人と闘いたいので」
15日の安納戦をクリアし、その後も2冠を守り続けたとして、それでも彼女はずっと挑戦者のままだ。そして挑戦者である限り、特徴的な目の鋭さも失われないだろう。