濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
水着グラビアも披露のアイドル路線から急転換…素顔は“オラオラ”、スターダムのベルトも獲得した岩田美香の渇望「総合格闘技かキックにも」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2024/07/14 11:01
安納サオリを破り、ワンダー・オブ・スターダム新王者となったセンダイガールズの岩田美香
デビュー当時はアイドル路線、水着グラビアも…
デビューから1年ほど経って、リングネームが変わった。一般公募で選ばれた「白姫美叶」。いわゆるアイドル路線、ビジュアル路線で“美仙女”というキャッチフレーズも。週刊誌の女子プロレス特集で水着姿を披露したこともある。
「その頃は団体が決めた方向性に従うだけでしたね。キャラ作りとか自己プロデュースとか、自分ではできなかったですから」
同期には、レスリングで活躍し鳴り物入りで入団した橋本千紘がいた。現在の女子プロレスにおける“強さの象徴”の一角と言っていい存在だ。岩田はジェラシーやコンプレックスを抱くことすらなかった。
「同期なのでよく比べられましたけど、私は橋本がいてくれて心強かったです。努力の人なので、強くて当たり前だと思ってましたね。とにかく練習しますから。自分で決めた練習をどんな時でもやり抜くんです。むしろ練習嫌いで自分を追い込めないのは私のほうで」
先輩にはハードコアとタッグ路線でトップを走るDASH・チサコもいる。その中でいかに自分を確立するかが岩田のテーマになった。リングネームは本名に戻した。
「“美仙女”は自分の素と違いすぎましたね。可愛いって言われるのは嬉しいんですけど、それを言われたくてプロレスラーになったわけじゃないしなって。今はキャラとかじゃなく自分のやりたいようにやって、それで結果が出るようになりました。だから凄く楽しいですね。里村さんには、チャンピオンになった時に“ご期待に添えずすいません”と伝えました(笑)」
「自分たちは男女関係なくプロレスラー」
だが岩田が“里村の教え”をよく守っているのも間違いない。仙女のプロレスはまず基礎体力重視。技や受身の練習も、体ができていなければさせてもらえない。
「体力がないのにどんな技ができるんだという考え方ですね。だからひたすら腕立て、腹筋背筋にスクワット、ブリッジをやるところからスタートです」
それはプロレスラーらしい見た目へのこだわりにも通じる。
「たとえばお腹が見えるコスチュームなのに脂肪が浮いてたらみっともないよ、と。そういうところは里村さんから厳しく指摘されますし、アドバイスももらいますね。自分たちは男女関係なくプロレスラーでありアスリート。一般の人とは違うというところを、体から表現しなくちゃいけない」
じっさい仙女には、体つきから練習不足を感じる選手が一人もいない。地方の団体だが、東京の団体に負けているつもりはまったくないと岩田は言う。
「たくさんのメディアに出て幅広く知られるという感じではないですけど、宮城の人たちが初めて女子プロレスに触れるのは仙女という場合が多いですから。初めて見た人に“仙女って面白いな”、“プロレスラーは凄いんだな”と感じてほしい。それができるのが仙女だと思ってます」