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頂点を争う現役F1ドライバーに友情は成立するのか? トップと2位で接触したフェルスタッペンとノリスの場合
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2024/07/12 17:00
オーストリアGPで後方にノリスを従えトップを走るフェルスタッペン。このあと2人は接触した
ところが、そうならなかった。フェルスタッペンにとってノリスは、かけがえのない友人のひとりだったからだ。2人はサーキットだけでなくプライベートでも良好な関係を築いてきた。休みの日にはオンラインでレースをするほどの仲で、サーキットから同じ飛行機で帰路につくことは珍しくない。さすがに今回は別々の便でオーストリアを後にした2人だが、レース翌日に早速、話し合いの場を持った。
フェルスタッペンは次戦イギリスGP開幕前の記者会見で、自らの気持ちをこう語った。
「レース後、僕が唯一、気にかけていたのは、ランドとの関係を維持することだった。彼は素晴らしい友人だからね」
ノリスもオーストリアでの発言が少し過激だったと認めた。
「レース後の自分の発言は、アドレナリンが出て感情が高まっていたから。苛立って思っていないことを言ってしまうのと同じ。だから、彼が謝罪する必要はない。僕らはあの日のレースについて話し合い、これからも激しくレースすることで意見が一致した」
トップドライバー間にも友人関係は成立する。セナとゲルハルト・ベルガー、セバスチャン・ベッテルとキミ・ライコネンなどがそうだ。ただし、彼らは同じ時期にコース上で激しい争いをほとんどしていない(タイトルを争うほどのライバル関係にあったミカ・ハッキネンとシューマッハは、プライベートでは親しくなくとも尊敬し合う仲だった)。
フェルスタッペンとノリスはコース上で火花を散らすほどの戦いを演じつつも、友情を大切にするという極めて珍しい関係にある。そもそもその友情は、私たちが想像するものとは形が異なるのかもしれない。
戦いの宿命と信頼
接触事故から7日後のイギリスGP決勝で、2人は3度にわたってバトルを展開した。最初はスタート直後の4コーナーで、4番手スタートのフェルスタッペンが3番手スタートのノリスをアウトからオーバーテイク。2度目は15周目のストウ・コーナーで、フェルスタッペンのインに飛び込んでノリスが3番手のポジションを奪い返す。3度目はレース終盤の48周目。15周目と同じストウ・コーナーで、フェルスタッペンがアウトからノリスを抜き返した。
会見でのフェルスタッペンは、友情を大切にしつつもノリスにこう告げたと明かしていた。
「これからも僕たちは激しくバトルしなきゃならない。だって、それが僕らの選んだ道だし、F1にとっても良いことだと思うからね。だから、また同じようにバトルすることがあっても、僕を信じて飛び込んできてほしい。僕も君を信じて飛び込むから」
現在のポイントランキングでフェルスタッペンは1位、ノリスは2位。これからも、2人の熱いバトルが見られそうだ。