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17歳で日本選手権優勝…“800mの怪物”落合晃の衝撃「一度も先頭譲らず」「勝っても地面を叩いて号泣」雨中の圧勝劇を振り返る 

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和田悟志

和田悟志Satoshi Wada

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photograph byAsami Enomoto

posted2024/07/05 06:02

17歳で日本選手権優勝…“800mの怪物”落合晃の衝撃「一度も先頭譲らず」「勝っても地面を叩いて号泣」雨中の圧勝劇を振り返る<Number Web> photograph by Asami Enomoto

日本選手権の800mでシニア選手を抑えて圧勝した17歳の落合晃。パリ五輪参加標準記録を目指した果敢なアタックが印象的だった

 しかし、決勝のレースは大雨の悪コンディションに見舞われた。

「昨日(予選)の疲労は全然感じていなくて、万全な状態で迎えることができた。調子の良さでいったら、昨日のほうが良かったかなと思うんですけど、今日も行ける自信はあった」

 落合が言い訳を口にすることはなかったが、本人は自覚していなくても、疲労もあったのではないだろうか。

「1周目は51秒ぐらいで入る想定をしていて、自分の感覚では想定通りに入ったんですけど、53秒かかってしまった。まだ51秒で入る感覚が身についていなかった」

 こう話すように、自身の感覚と実際の通過タイムとに約2秒のズレが生じていた。この2秒の遅れを残りの400mで回収するのは簡単ではない。結果は目標タイムに届かず。見る者をもワクワクさせた、落合のパリへの挑戦はこうして終わった。

 とはいえ、来年の東京世界選手権やロサンゼルス五輪ではなく、直近のパリ五輪を目標にしたことが、加速度的に落合の成長を促したのも確かだ。

「悔しい優勝にはなりましたが、パリではなく、この舞台での優勝を目標に掲げていたら、絶対に優勝もできなかったし、大会記録の1分45秒台も夢みたいな感じで終わっていたと思う。パリを目標に挑戦してきたから、日本選手権で優勝できたし、日本記録にも近づくタイムを出せたと思います」

 それは落合自身も自覚している。高い目標に本気で立ち向かったからこそ、得られたものも大きかった。

世界と距離がある中距離種目…若手の台頭に期待

 小学生の頃はトライアスロンに取り組んでいた落合が、陸上を始めたのは中学生から。その才能は中距離で開花し、高校生にして日本の頂点に上り詰めた。まだ17歳。落合の挑戦はまだまだ続く。

 男子800mは、2016年のリオデジャネイロ五輪に川元が出場したのを最後に、日本勢は五輪の出場権を得られていない。

 今回は、落合の他にもU20日本選手権の800mを制した吉澤登吾(桐朋高)や同1500m覇者の樋口諒(カンザス大)ら、きらりと光る若手の中距離走者が多かった。

 彼らが日本の中距離界を活性化させ、再び世界への扉をこじ開けてくれるだろう。

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