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「受け身じゃ世界は無理なんや」“モデルジャンパー”から国内3年間無敗の女王に…走幅跳・秦澄美鈴(28歳)が目指す「世界へのリベンジ」
posted2024/07/01 19:21
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph by
Asami Enomoto
大粒の雨が降りしきる中で迎えた、陸上・日本選手権の最終日。トラック最終種目の男子100m決勝を終え、最後の種目となった女子走幅跳は秦澄美鈴(住友電工)が6m56cm(+1.4)を跳び、4連覇を遂げた。
新潟の地で行われた4日間の日本選手権は、すでにパリ五輪の参加標準記録(6m86cm)を突破している秦の五輪内定とともに、熱狂のうちに幕を閉じた。
パリ行きの航空チケットを模したボードを手渡され、場内インタビューでは晴れやかな笑顔を浮かべていた秦。だが、表彰式などを終えて取材エリアに現れた彼女は、至って淡々としていた。
「東京五輪は出られなくて、ちょっと悔しい思いをしたので、出場が決まったのはうれしいのですが、まだ結果を残せたわけではないので『よっしゃ』とは思い切れないのが正直な気持ちです」
五輪内定は決めたものの、跳躍自体には「手応えを感じていない」という。
圧勝でも「及第点はあげられない」…厳しい自己評価
今季の秦は、4月の兵庫リレーカーニバルで優勝し、屋外シーズンをスタート。木南記念では今季国内最高の6m72cm(+0.1)をマークして優勝した。ただ、試合後から調子が崩れていたといい、「試合をこなしながらできる範囲で練習を積んできて、ここまでの1カ月くらいでしっかり練習ができるようになった」と明かす。
今回はパリ五輪の決勝進出を見据えて「前半試技で6m70cm台後半を跳ぶ」ことをテーマに臨んだ。だが、悪天候の影響もあり、助走が思うように走れず前半3回の跳躍は6m17cm、6m37cm、6m41cmとなかなか好記録につながらなかった。
最終跳躍で6m56cmを跳んだが「及第点はあげられない」と評価は厳しめ。助走スピードを上げ切ることに課題を残した一方で、それが上手く噛み合えば、記録に結びつくという感触も得ているようだ。
「今までなら一本記録が出せても安定感に欠けていたり、風に左右されたりしていましたが、今の助走のリズムならスピードさえちゃんと出せれば安定すると思うので、オリンピックにむけて調整を進めていきます」