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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「投手はやめろ、打者になれ」落合博満の助言に「責任取って」…愛甲猛を覚醒させた“三冠王の徹底指導”「あの落合さんが新聞紙を丸めてトスを…」
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph byKYODO
posted2024/06/28 11:05
1980年のドラフトで1位指名を受け、ロッテオリオンズに入団した愛甲猛。4年目に投手から打者に転向し、勝負強いバッティングで主軸を務めた
落合博満とマンツーマンの打撃指導
そして愛甲は打者転向を決断する。「もしも失敗したら、きちんと責任を取って下さいよ」と軽口を叩くと、落合は「わかった」と答えたという。
「オレの人生の分岐点はプロ3年目の秋のキャンプでした。本来、落合さんは一人部屋だったのに、僕を部屋子にするようにマネージャーに命じて、つきっきりで打撃指導してくれたんです」
日中はグラウンドで徹底的にバットを振り込んだ。そして、夜8時の夜間練習が終わると、宿舎の自室で落合の指導の下、再びバットを握った。連日、深夜1時まで続いた。
「もう、毎日ですよ。信じられないかもしれないけど、あの落合さんが新聞紙を丸めて、僕にトスを上げるんです。このとき落合さんには、“左ピッチャーのボールをライトにホームランを打てるようになれ”って何度も言われました」
深夜の特訓が続いたある日。落合は「よくなったな」と言い、打撃コーチの部屋に、その場で電話をかけたという。
「深夜1時過ぎですよ。いきなり打撃コーチを呼び出して、“ようやく猛がモノになった。見てやってほしい”と言ってくれたんです」
さらに落合は「オレはバッティングの基礎は教えられる。でも、オレは右打ちだから、左打ちについては(レロン・)リーさんに聞け」と言ったという。
「当時、すでに三冠王を獲っていたのに、そんなことを言うんですから。やっぱりすごい人ですよ、落合さんは」
深くうなずきながら、改めて愛甲は感嘆していた。
<前編とあわせてお読みください>