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ラグビー経験わずか2年の17歳で日本代表候補も…W杯出場経験ナシ “イングランド戦で代表復帰”「消えた天才」山沢拓也(29歳)の魅力とは?
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byAsami Enomoto
posted2024/06/24 11:10
苦戦が続いたイングランド戦でトライを決めた山沢拓也。若かりしころからラグビー界の期待を集めた天才も29歳になった
2022年、リーグワン初年度に埼玉ワイルドナイツを優勝に導いた際には久々で日本代表に招集され、同年10月のオールブラックス戦ではスタンドオフで先発。相手陣で不規則に弾んだボールを巧みなドリブルで前方に運ぶ鮮やかなトライも決めた。だが続く欧州遠征のイングランド戦で前半、タッチキックをミスすると40分でピッチに下げられ、翌年のW杯に向けた日本代表スコッドからも名前が消えた。
フランスW杯が終わって迎えた2024年のリーグワンでは、ワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督は山沢を主にFBで、ときにリザーブからSOやWTBに投入。山沢の閃き溢れるアタックはワイルドナイツのリーグ戦全勝に大きく貢献した。そしてシーズン終了後、日本代表のHCに復帰したエディー・ジョーンズは代表スコッドに山沢を呼び戻した。山沢の名前は選手リストの最後にあった。
「リストを見て、自分はFBなのかなと思っています」と山沢は言い、続けた。
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「自分の中では、まだできないことがいっぱいある。もっとラグビーが上手くなりたい。今は特に15番(FB)としての経験値が足りないので、15番のスキルをあげていきたい」
山沢の持つ「閃き」の魅力
本人の評価とは裏腹に、ファンやメディアからは常に山沢待望論があがっていた。
それは山沢の持つフレア=閃きの魅力からだ。華があるだけではない。現代のラグビーは高度に情報化された中で試合が行われ、ほとんどのプレーは事前に計画された中で進むが、戦術分析も進んでおりトライは簡単には生まれない。だが山沢はときに、チームが想定していなかったチャンスを見つけ、あるいは作り出す。
「考えすぎないようにしています」と山沢は言う。
「細かいシェイプ(攻撃時の選手のポジショニング)の効果も分かるのですが、チャンスが生まれたときに、そこに反応できる状態でいたい。シェイプのことを考えるよりも、そのチャンスを活かせるように瞬時に反応したいんです。考えすぎると、考えてから動く分反応が遅くなってしまう。それだと自分の良さが出ないというか、今までの自分のプレーを振り返ると、考えるよりも先に身体が動いたときの方が結果的に良かったりするんです」