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甲子園の風BACK NUMBER
高1の大谷翔平が涙、花巻東まさかのコールド負け…幼なじみ捕手が振り返る“最後の夏”「最後、一緒にバッテリーが組めて…」
posted2024/06/19 06:01
text by
内田勝治Katsuharu Uchida
photograph by
JIJI PRESS
頼むわ。流れを変えてくれ
花巻東で過ごした最後の夏。4番捕手、そして主将とチームの中核を担った佐々木大樹が最後にバッテリーを組んだ相手は、2学年下の幼なじみだった。
2010年夏の岩手大会。連覇がかかる花巻東は、2回戦の花泉、3回戦の金ケ崎をともに10-1の7回コールドで撃破。1年生ながら背番号17でベンチ入りした大谷翔平は出番がなく、ベンチで声を嗄らしながら先輩たちの背中を押した。
しかし7月22日、盛岡中央との4回戦は、まさかの展開となった。序盤から失点を重ね、4回を終え0-8。大谷は、そんな劣勢の6回裏に、4番手投手として初めて出場した。前年夏の王者として、このまま終わるわけにはいかない……。緊張した面持ちでマウンドに向かう大谷に、佐々木は声をかけた。
「頼むわ。流れを変えてくれ」
大谷に手渡した野球用具
高校野球におけるコールドゲームの規定は、5回終了時に10点差以上、または7回終了時に7点差以上。仮にこの回を0点に抑えても、7回表に2点以上を取らなければ、コールドゲームが成立してしまう。佐々木洋監督は、最速144キロを投じる大型1年生に、試合の局面を変える好投を期待してマウンドに送り出した。大谷も無安打無失点に抑え、ベンチに反撃ムードを呼び込んだ。
「まずは点差を縮めようとしか考えてなくて、監督も翔平で流れを変えたいと思って使ったんだと思います。最後はショートライナーで抑えたのは覚えています」
7回表。打席が回った大谷は二塁打を放ち、「投打二刀流」のデビューを飾ったが、本塁を踏むことなく、0-8のまま7回コールド負け。佐々木の高校野球、そして大谷と過ごした短い夏は終わりを告げた。