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結婚、右WB…堂安律が26歳に「リツがやってのけた!」ドイツ恩師も驚く“レバークーゼンだけじゃない”学び「内田さんと長友さんの場合は」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJFA/AFLO
posted2024/06/16 11:00
6月シリーズで新境地を見せた堂安律。26歳となった彼の貪欲さが現れたエピソードとは?
「『この監督のときには、こういう戦術があったよ』とか、そういう話は(普段から)細かくしています。今回も3バックを試しますけど、『ザッケローニの時はこういう感じでやっていた』よと」
そこで興味深いのは、長友が満を持して当時のエピソードを堂安に説明したわけではなかったこと。長友はいつも通り、チームの成長を願ってコミュニケーションを取ったつもりだったという。
貪欲な堂安は、長友のアドバイスに対して熱心に耳を傾けたのち、こんな風に分析していた。
「今までの5バックの考え方だと、(中央にいる)2シャドーが走ったことで空いたスペースにウイングバックが入っていないんです。ザッケローニ監督が3-4-3をやったときにも、内田(篤人)さんと長友さんの場合は、コントロールするために入っていかなかったみたいなので……」
だからこそ、試合前から意識していた。
「ウイングバックだったとしても、入るべきところに入ることを意識したいなと思います」
そして、シリア戦でもゴールを決めたのだった。あれは、長友を通じてザッケローニが指揮を執った時代から学びを得たからことで生まれたゴールでもあるのだ。
結婚、ウイングバック、26歳…すべてを飛躍の契機に
そうやって日本代表の過去を大切にする堂安は、 “あるジンクス”を知りながら、五輪代表でも背番号10を嬉々として背負った選手だ。
「五輪代表で10番を背負った者は、直後のW杯でメンバー入りすらできない」
2016年リオ五輪までそんなジンクスがあったが、それすらプレッシャーに変えた。そして、2021年の東京五輪で10番を背負い、翌年のカタールW杯ではメンバー入りしてドイツ戦とスペイン戦で計2ゴールをたたき込んだ。
現代表の中でも、日本代表の歴史をリスペクトして、その財産を自らの力に変えようとする想いが強い選手が堂安なのかもしれない――。
6月16日、堂安は26歳の誕生日を迎えた。
「思ったよりも(お祝いのメッセージは)少なかったですね。悲しい誕生日でした(笑)」
昨年の誕生日にそう話していた堂安は、今年に入り人生の伴侶を得た。もう一人ではない。
1月に入籍し、5月にプロポーズをしたということで、順番が逆だと話題になったが、これはドイツで一緒に暮らすことを最優先に考えたからではないだろうか。一介の女性がドイツで暮らそうとしてもビザは簡単に降りないが、社会的な責任のあるプロサッカー選手の家族であればビザ取得に支障はない。
きっと堂安は、彼女が日常を実りあるものにしてくれる素敵な女性だとわかっていたのだろう。実際に、入籍後の堂安はリーグ戦14試合で6ゴール、3アシストと、ハイペースでゴールに絡んでいった。
ピッチの上では10番としての責任を背負い、ピッチの外でも新たな責任を背負うことになった。背負い込んだものを力に変えようとする堂安のことだ。これを機に、さらなる飛躍を遂げたとしても不思議ではない。
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