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「辞めるのはいつだってできる」引退も考えた井上愛里沙を説得した眞鍋政義監督のひと言「お前を最後に選ぶかどうかは分からない。でも…」
text by
眞鍋政義Masayoshi Manabe
photograph byYuki Suenaga
posted2024/06/20 11:01
日本代表のアウトサイドヒッターとして活躍する井上愛里沙。東京五輪落選後に一度は引退も考えたという井上を復帰させた眞鍋政義監督のひと言とは…
「東京はもう終わったことやし、考えてもしょうがないやろ。辞めるのはいつだってできるよ。おまえはジュニアであれだけ活躍して、久光でも優勝して、得点王も取ったんだから、まだまだやれると思うよ。悔しい思いがあるのなら、パリに向けていっしょにやろう。年齢的にもパリが一番いいと思うよ」
禍福はあざなえる縄のごとし。パリを目指すチームで活躍すれば、一躍日本の救世主になれる。つらい経験をしても、ポジティブ発想に転換すればいいのだ。
ただし、その上でこう付け加えるのも忘れなかった。
「でも、おまえを最後に選ぶかどうかは分からない。それは活躍次第や。でも、俺はおまえならできると思うよ」
井上が「ちょっと考えます」と言うので、ひとまず電話を切った。
それから1週間ぐらいして、あらためて電話してみたら、「やらせていただきます。 パリに向けてがんばります」と明るく言ってくれた。「よっしゃ、じゃあ、いっしょに がんばろう!」
今回の代表には京女が多い
2022年、新生ジャパンの初陣で、井上愛里沙は爆発的な活躍を見せることになる。
これは余談だが、井上をはじめ、林琴奈、福留慧美など、今回の代表には京都出身者がけっこういる。われわれ関西人にとって、京都人はちょっといけずなイメージが ある。たとえば、京都の人に「眞鍋さん、よう来はったなあ。うちにあがっていって」 と言われたとする。でも、「あ、そうですか」とすぐにあがってはだめなのだ。3回は断って、「それでも」と言われたら、ようやくあがってもいい。そういう暗黙のしきた りを知らないと、ただの図々しい人だと思われてしまう。
だから、冗談で「今回のメンバーは京女が多いから怖いなあ。ちょっと注意しない といけないな」と言ったりしている。そうすると井上は、「じゃあ、京都会つくっちゃ いますよ」と脅してきたりする(笑)。
<続く>