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なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
“生意気だったユイ”が求める理想の集団とは? なでしこ長谷川唯が明かしたブラジル戦号泣の真相「もう一回、パリで同じこと起きちゃうよ」
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byJFA/AFLO
posted2024/05/31 11:02
4月のSheBelieves Cupは連敗に終わったなでしこジャパン。パリ五輪でも戦うブラジルに敗れた後、長谷川は涙を流した
一方で長谷川は「もちろん去年のワールドカップと今のチームは同じようなチームで、監督も代わってないので成長を比べるのは大切」と言う。池田太監督が率いるなでしこジャパンとしては、昨年W杯を戦いベスト8に進出、チームは一定の成果を出してはいるが長谷川は彼女らしい課題も感じている。
「サッカーとしては日本も進歩しています。でも、世界のサッカーの発展と比べたら足りないなとは個人的に思っているので。それは個の能力が足りないのではなくて、やっぱりまだまだ考えてサッカーをやる選手が足りないということかなと。日本人はフィジカルでどうしても勝てないシーンがある中で、それじゃ(もっと考えないと)足りないよって思うことがあるんです。
日本人の選手でもフィジカルに優れた選手が出てきたり、昔では考えられないような感覚でサッカーをやってる選手も多分いて、良い意味で日本人らしくない選手が出てきたとは思う。その中で日本人の良さをしっかり受け継ぎながら、新しい選手が出てきたらいいなと思うんですよね」
例外的な選手は出てきたものの、大半の選手は個の能力やフィジカルが勝てない分、パスをつなぐだけでなくて頭を使おう、ポゼッション・守備の連動・連携を武器にひたむきに戦う従来のなでしこジャパンの良さに考える力をもっと、と長谷川は訴える。
小さな頃から今に至るまで小柄で、今現在プレーするのは女子サッカーの最先端WSL。常に考えることを強いられてきた長谷川だからこそ思うことだろう。
そんな話をしつつも、“気持ち”の大切さに話は再び流れていく。
「昔は生意気だった」「イワシさんに聞いて」
長谷川はピッチ上での疑問や意見は、その場その場で言葉にして解決するタイプだという。確かに、試合中に仲間に近づき話をする場面は頻繁に見られる。若い頃からそれは変わらず、ベレーザでプレーし始めた高校時代から年上の選手たちにも臆せず要求し、時には言い返しもしたそうだ。
「イワシさん(DF岩清水梓)なんか後ろからバンバン言うタイプで、結構強く言ってきてる中で自分はそれに対して『はい、はい』っていう感じではなかったので。ほんとに生意気で、上の選手たちに助けられたなっていうのは思っていて(笑)。イワシさんに聞いてもらったら、どんな感じだったかわかると思います」
実際は、まだまだ体育会的な上下関係もある中で大変な思いもしただろうが、言うべきだと思ったことは言ってきたし、その考えは今も変わらない。
「昔の私はちょっとやりすぎかもしれないですけど、でもちょっとバランス取ってくれる選手もたくさんいるので、そういう選手が出てきたらなでしこはもっと強いんじゃないかなと思います」
多少の生意気さも受け止めてくれる先輩のありがたさも身にしみて分かるからこそ、意見してくる若手が出現したら受け止める準備もある。あの頃のサッカーと比べる必要は全くないが、継承されるイズムのようなものは確実にそこにある気がした。