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[夢のマッチメイクとは]内山高志×山中慎介「酒場で語るモンスター論」
posted2024/05/31 09:02
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Manabu Numata
東京ドームの熱戦から数日後、恵比寿のバーで2人の元世界王者が怪物を肴に酒を酌み交わした。歴代王者で誰がモンスターと戦えば面白いか――。架空のマッチを夢想して、今大いに語り合う。
内山 東京ドームに4万人以上のお客さんを集めて、ほぼ満席にする井上尚弥のスター性は、すごいなと思ったよ。
山中 僕も会場にいましたが、あれだけ広くて、多くの人がいるなかで、内山さんと会えるとは思わなかったです。
内山 なんだよ、その入りは! それにしても、入場時の大歓声にも驚いたよな。過去にボクサー1人であそこまで沸かせた選手はいる? 俺は鳥肌が立ったよ。
山中 ボクシングが誇らしく思えました。
内山 いざゴングが鳴ってからも、びっくりしたよね。いつもはリードを突きながら、踏み込まずに慎重に行く尚弥が、最初から大振りのパンチを見せたでしょ。これは倒す気が満々なんだなって。
山中 その思いは、試合のあの入りから伝わってきました。熱気があふれていたドームの空気が影響したのかもしれませんね。
内山 集中力以上に気持ちが前に出ていたから。初回のダウンは接近戦だったけど、あんな無防備になる尚弥は、ほとんど見たことがなかった。
山中 スロー映像で見ると、余計にそう思いました。会場中が、尚弥の人生初ダウンに動揺しましたよね。
内山 俺なんて、倒れるわけがないと思っていたのでスリップかと思った。ただ、ダウンしたあと、尚弥が冷静に立ち上がるのを見て、これは大丈夫だなと。