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「一番激しい団体に…」旗揚げ戦でジュリア&林下詩美のエース組が敗北…新団体・マリーゴールドの圧倒的な新鮮さとは? スパイスは「昭和テイスト」
posted2024/05/23 17:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Essei Hara
記者席やインタビュースペースで、何人ものベテラン記者を見かけた。数年ぶりに見る顔もあった。
普段の“持ち場”は違ってもこれだけは見逃すまい、ということか。5月20日の後楽園ホール。女子プロレスの新団体マリーゴールドの旗揚げ戦だ。
代表のロッシー小川氏は、女子プロレス界における“最重要人物”の1人だ。全日本女子プロレス(全女)でクラッシュ・ギャルズ(長与千種&ライオネス飛鳥)のマネージャーを務め、1990年代には他団体との対抗戦で一大ムーブメントを築く。この時期の全女は東京ドーム進出を果たした。
全女を離れると1997年に“ハイパー・ビジュアル・ファイティング”を謳うアルシオンを旗揚げ。さらにグラビアアイドル“ゆずポン”こと愛川ゆず季のプロレスデビューをきっかけにスターダムを設立した。スターダムは2019年に上場企業ブシロードに事業譲渡。業界最大の女子プロレス団体に成長している。
いわゆる“仕掛け人”。選手の引き抜きの噂など批判する者も多いが、一方で何人ものスター選手を育成してきた。今回のマリーゴールド旗揚げに際しても、選手の多くが「小川さんについていく」、「ロッシー小川のもとでプロレスがやりたい」という理由から行動をともにした。
マリーゴールド旗揚げにかけるロッシー小川の熱
小川氏がエグゼクティブ・プロデューサーを務めていたスターダムを契約解除となったのは今年2月のこと。契約期間中に選手引き抜き、新団体設立に動いたことが理由だ。
確かにこれは重大なルール違反。ただ背景にはスターダムのゴタゴタがあった。大会運営の不手際や一部スタッフの選手に対する不誠実な態度が取り沙汰され、11月に社長交代が発表された。そうした中で、小川氏はスターダム離脱を決意する。
ブシロード体制のスターダムでは、小川氏は「マッチメイクしかやっていなかった」。ビッグマッチを連発、リーグ戦の最中にタイトルマッチを行うような、選手の負担になるスケジュールも問題視されていた(新体制のスターダムでは改善されている)。
かつてのように、日程や会場規模なども含めトータルに団体をプロデュースしたい。そうした熱が小川氏の中で高まっていたようだ。だから自分で作ったスターダムと袂を分かち、マリーゴールドを旗揚げすることになった。
4月の旗揚げ発表会見には、3月いっぱいでスターダムを退団したジュリア、林下詩美、MIRAI、桜井麻衣と新人のビクトリア弓月が参加。またフリーでスターダムの旗揚げメンバーでもあった高橋奈七永、アイスリボンからフリーになっていた石川奈青も。会見にはアクトレスガールズを離脱した選手たちが“乱入”し、参戦をアピール。後に入団会見が行われている。
チケットは完売、第1試合から“地鳴り”が…
プロレスファンも“仕掛け人”の新たな行動に興味津々だった。旗揚げ戦のチケットはあっという間に完売。立ち見を入れて1539人、札止めの観衆が月曜日の18時30分に集まった。オープニング・セレモニーの時点でほぼすべての客席が埋まり、手拍子と歓声が絶えない。期待感がそのまま熱につながっていた。記念すべき第1試合、ベテランの高橋に弓月が張り手を見舞うと、地鳴りのような反応が。完全に“出来上がった”状態だ。