野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
「俺が巨人やソフトバンクのGMをやってもダメ」だった理由は…? 元GM高田繁(78)が語るDeNAの特殊性「優勝へのアプローチの仕方が違う」
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byJIJI PRESS
posted2024/05/19 06:01
DeNAに復帰し早々に活躍を見せている筒香。FAには消極的だったという高田氏も「筒香は別」とその存在感に太鼓判を押す
――恨みっこなし……だとしてもやっぱり主力選手が他球団に流出してしまったらと思うとやるせないですね。
高田 それは俺も同じだよ。筒香には何が何でも帰ってきて欲しい。だけど、ファンの気持ちや声に耳を傾けすぎていては編成なんてできない。選手の首切りだってそうだよ。全員が納得することなんてどだい無理な話や。
人気選手を他球団に獲られたら、「編成は何をやってるんだ」と叩かれる。大金をはたいて獲得したとしても、今度は思い通りの活躍をしなければ「あんなのに10億も払うなら外国人投手でも獲れよ」とまた非難される。まぁ責任者は常に嫌われ役だからね。優勝することだけしか正解がないんだよ。
――その優勝をするための手段として、チームの思想が違えば、選手獲得や育成の方針も違い、お金の使い方も全然違うものになる。
高田 そうだね。だからGMをやるにも球団の向き不向きがある。俺なんかは巨人やソフトバンクでGMをやっても全然ダメだったろうね。
生え抜きを使いたくても「FAで枠が埋まっちゃう」
――高田さんが巨人で指導者をされていた90年代は大FA時代でした。
高田 俺にとっては最悪だったよ(笑)。次から次へとFAで4番バッターが来ただろ。
――来ましたね。
高田 あの時も、若い才能のある選手がいっぱいいたんだよ。斉藤宜之とか鈴木尚広とかね。一軍で使ったらもっと伸びるだろう。でも一軍は勝ちたいから、「使ってみてよ」と進言してもFAで枠が埋まっちゃうからどうしようもない。
――やはり“優勝を義務付けられているチーム”というプライドがまだ色濃かった時代でした。
高田 それ、よく言うでしょ。でもね、どこのチームだって日本ハムだって、ヤクルトだって、ベイスターズだって同じように優勝したいんだよ。「今年は優勝しなくてもいいや」なんて思っているチームの人間は誰もいないよ。