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偉大な父・辰吉丈一郎の存在は重荷ではない? 無敗のボクサー・辰吉寿以輝27歳のホンネ「息子じゃなければ『ちゃうやろ』と思いますけど…」 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byHiroaki Yamaguchi/AFLO

posted2024/05/12 11:11

偉大な父・辰吉丈一郎の存在は重荷ではない? 無敗のボクサー・辰吉寿以輝27歳のホンネ「息子じゃなければ『ちゃうやろ』と思いますけど…」<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi/AFLO

2019年12月、デビュー13連勝を果たした辰吉寿以輝。父・丈一郎と並んで嬉しそうにガッツポーズ

「言い方が悪いんですけど、根本的に殴るのが好きなんですよ。普通に人を殴ったら怒られて、捕まるじゃないですか。それがボクシングなら、褒められて、お金までもらえるんですから。ボクシングが合っていたということだと思います。ほかに何もできないんで」

 昭和のレジェンド、“炎の男”輪島功一さんとまったく同じセリフを口にするのだから驚いた。輪島さんは24歳でボクシングをはじめ、努力と根性で世界チャンピオンに登り詰めた。辰吉寿以輝もまた、同じように世界チャンピオンを夢見る若者なのだ。

「自分が一番強いと思ってこの世界に入ってる」

 これまで、空回りした試合もあったし、不細工な試合をしたこともあった。足りないところがあることも分かっている。「天才肌ではない」という自覚から、練習はコツコツと積み重ねてきたつもりだ。

 その成果が表れたのが今年1月、エディオンアリーナ大阪で開催された『Prime Video Presents Live Boxing 6』の与那覇勇気(真正)戦だった。倒す気満々だった寿以輝は序盤に両拳を痛めながら、一発に頼らないコンビネーション主体のボクシングに切り替え、日本ランカーの与那覇との技術戦に勝利。成長の跡を示し、日本ランキング復帰を果たしたのである。

 この試合で寿以輝のタイトル挑戦への期待はグンと高まった。もっとも本人は周囲の評価と関係なく、以前から「はよやらせろ!」とファイティングポーズを取り続けている。

「チャンピオンはみんな強いと思います。でも、絶対に勝てるという自信があります。試合をしてくれたらチャンピオンになります。いつでも、だれが相手でもいきます。自分が一番強いと思ってこの世界に入ってるのに、この選手ならやるとか、この選手はやらないとかはないですよね」

 冒頭で口にした「根拠のない自信」とは、どこまでも自分を信じ切る力だ。寿以輝はこの試合に勝利し、待ちに待ったタイトルマッチに王手をかけようとしている。

<前編から続く>

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「バイクとかパクってええけど、ちゃんと返せよ」辰吉丈一郎の“ナゾの教え”に「アカンやろ」…次男・寿以輝が明かす“辰吉家の超ポジティブ教育”

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