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ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
偉大な父・辰吉丈一郎の存在は重荷ではない? 無敗のボクサー・辰吉寿以輝27歳のホンネ「息子じゃなければ『ちゃうやろ』と思いますけど…」
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi/AFLO
posted2024/05/12 11:11
2019年12月、デビュー13連勝を果たした辰吉寿以輝。父・丈一郎と並んで嬉しそうにガッツポーズ
それでも寿以輝は「これが相撲ならやりますけど。必要性はそんなに感じないです。殴り合いですから。ちゃんと食って、寝て、練習すれば、ある程度大丈夫だと思います。最低限、腕立てとか懸垂くらいはやりますけど」と意に介さない。「なんか昭和っぽいですね」と問いかけると、「そうなんですよ。考え方も昭和っぽいって言われます」と笑うのだ。
対戦相手の研究を「まったくしません」というのも、ここまでくると予想できる答えだろう。その理由が「先入観を持ちたくない」であればよくある話なのだが……。
「なんか嫌じゃないですか、研究するって。臆病っていうか“ビビってる感”が尋常じゃない感じがしませんか? 自信ないんかなって。それやったらどんと来い、というほうがいいと思うんですよ。逆に(相手には)研究してくれと思いますね」
“辰吉2世”の看板は「得することしかない」
こうして語録を並べてみると、“ビッグマウス”が称賛も批判もされた父、丈一郎の影響を強く感じずにはいられない。寿以輝はボクシングをする上で、偉大な父の存在をどのように感じているのだろうか。父の存在を重荷だと感じたことはないのだろうか。比較されることにストレスを覚えたことはないのだろうか?
「得することしかないと思ってます。そもそもほんまのこと言われてるだけなんで。僕が辰吉じゃなくて“辰吉2世”って言われたら『ちゃうやろ』と思いますけど。ほんまの2世なんで。全然嫌なことないですよ。親が嫌われてるわけでもない。『すごい、すごい』と言われてる親父の2世なんで。比べられる? 当時の親父をロボットで作り出してくれたら、やりますけどね(笑)。それは無理なんで、何とも思わないです」
幼稚園のときにボクシングの世界チャンピオンになりたいと思った。その思いはしぼむことなく、いまなお心に芯を作っている。それは父親とは関係なく、「ボクシングが好きだ」という思いがあるからだ。