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「実力差は明白」「井上尚弥が5~7ラウンドでKOする」米リング誌編集長が指摘するネリの致命的な悪癖とは?「危険な挑戦者ではあるが…」
posted2024/05/06 06:02
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
JIJI PRESS
日本ボクシング史上最大規模のタイトル戦のゴングがもうすぐ鳴り響く。
5月6日、WBA、WBC、IBF、WBO世界スーパーバンタム級王者・井上尚弥(大橋)が東京ドームで元2階級制覇王者ルイス・ネリ(メキシコ)の挑戦を受ける。
バンタム級、スーパーバンタム級の2階級を統一した現代の最強王者・井上が強さを見せつけるのか。2018年に日本ボクシングコミッションから受けた出場停止処分がついに解かれたネリが、日本人ボクサーの前に再び立ちはだかるのか。
世界ヘビー級元統一王者マイク・タイソン(アメリカ)がジェームス・バスター・ダグラス(アメリカ)の前に沈んだ歴史的番狂わせから実に34年――久々に東京ドームを舞台に行われるタイトル戦は、スタイル的にも好ファイトは必至と目される。
そんな背景がゆえに、海外での注目度も高い。そこで本稿は、軽量級ボクシングにも精通し、井上をかねてから高く評価する「リングマガジン」のダグラス・フィッシャー編集長に試合の展望、予想をじっくりと語ってもらった。フィッシャー氏の言葉からは今戦への期待感が感じられるが、その一方で他の多くのファン、関係者と同じように、両選手の戦力には明白な差があると信じているようでもある(以下、フィッシャー氏の一人語り)。
年間最優秀選手vs年間最高試合の勝者
昨年、井上はスティーブン・フルトン(アメリカ)、マーロン・タパレス(フィリピン)というスーパーバンタム級の2人の統一王者にKOで圧勝し、文句のない形でリングマガジンの“年間最優秀選手(Fighter of the Year)”に選ばれました。一方、ネリは昨年2月、アザト・ホバニシャン(アルメニア)に11回TKO勝ちを飾り、その激闘は“年間最高試合(Fight of the Year)”に選出されています。
伝統あるリングマガジンの歴史でも、“年間最優秀選手”対“年間最高試合の勝者”の激突が実現することなんていつ以来でしょうか。モハメド・アリ、ジョー・フレージャー、ジョージ・フォアマン(すべてアメリカ)といったヘビー級のスーパースターたちが鎬を削った時代まで遡らなければならないかもしれません。そんな背景もあって、今回の井上対ネリ戦を私も本当に楽しみにしているんですよ。