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SNSは複数アカウント運用、突然本人が「撮ってくれてありがとう」とメッセージ…ルイス・ネリを追ったカメラマンが振り返る“お騒がせ男”の素顔
posted2024/05/05 11:02
text by
北川直樹Naoki Kitagawa
photograph by
Naoki Kitagawa
来たる5月6日、ボクシング界の“悪童”が6年ぶりにファンの前に姿を現す。
かつてのWBC世界バンタム級、同スーパーバンタム級の暫定王者、ルイス・ネリ(メキシコ)だ。ネリは、当時日本人としてWBC世界バンタム級の絶対王者に君臨した山中慎介から王座を奪い去り、ダイレクトリマッチでも連勝を果たした。ただ、それぞれの経緯に問題があった。
周知の通り、山中との初戦後にドーピング禁止薬物のジルパテロールが検出された。このことを鑑みてセットされたリマッチでは、規定ウェイトを1.3kgオーバー。ネリはJBCから、日本での無期限資格停止処分を受けた。
表の素行からは、文字通りに悪童っぷりが際立つネリ。果たして彼の実像、キャラクターはどんなものなのか。
7年前、カメラマンとしてネリを追いかけた「記憶」
実は私はネリと直接、個人的なやりとりをしたことがある。
といっても面と向かって会話したわけではなく、SNS上でテキストのやりとりをしただけだ。他の日本人で同じようなやりとりをした人がいるかはわからないが、これはそれなりに貴重な体験談だと思っている。
2017年8月15日、当時の私はまだプロボクシングでの撮影実績がなかったためプレスパスを取得できず、前述の山中vsネリ戦の第1戦を客席から撮るために島津アリーナ京都(京都府立体育館)へ向かった。5万円ほどのリングサイド席を買い、観客席から試合を撮影した。
会場は異様な緊張感だったことを覚えている。
実力が未知数ながらも、当時無敗の挑戦者ネリは不気味だった。顎髭を蓄えた独特の風貌に、ときおり野性味を感じさせる無機質な目。体躯は目立った特徴はないものの、ハリのある肢体と盛り上がりのある筋肉に目を見張った。
試合が始まって、徐々にこの不安が増幅していく。独特の間合いとパンチが山中を襲う。山中のパンチも時折決まるものの、ネリは動じない。ラウンドが進むにつれてネリの連打の波が山中を捉え始め、形勢が傾いていく。そして4R。ネリの連打がまとまったタイミングで、山中サイドの大和心トレーナーがリングに入り試合が終わった。