フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
「2ポイントの減点。それならやろう」“禁止技”バックフリップを使用、話題のシャオ・イム・ファに聞いた真意「自己流は絶対にダメ」《独占》
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAkiko Tamura/Getty Images
posted2024/04/30 11:03
バックフリップの使用や世界選手権での逆転劇でも今季の話題をさらったフランスのシャオ・イム・ファ
アイスショーでバックフリップを演じるスケーターのほとんどは、過去に体操をやっていた経験がある。だがシャオ・イム・ファはそうではないのだという。
「僕のコーチが体操の経験があり、氷の上でもバックフリップをやっていた。その彼から習ったんです。危なくないように最初はフロアで練習をして、それを2週間毎日やった。ハーネスとヘルメットをつけて、段階をふんでやりました。氷の上に移ってからは最初の日は怖くてできなかった。不安だったらやるなと言われていたので。でも次の日は自信がついたのでやってみようと思ったんです」
結局、氷の上では2日間でマスターしたという。
体力的には“2回転ジャンプ程度の負担”
だが通常ならスケーターが新技をマスターするのは、より高いポイントを得るためだ。減点されるとわかっている技を、なぜわざわざ時間をかけて学ぶことにしたのか。
「スポーツをプッシュするために、新しいコレオジャンプを入れたかったんです。このスポーツにはたくさんの可能性があるけれど、バックフリップが禁止されていることが少し残念でした。できるスケーターはたくさんいるし、それぞれが得意なことを見せることができたらと思ったんです」
体力的には2回転ジャンプ程度の負担だという。危険だと言われているが、彼によると一旦習得してしまえば難しくはない。
「フィギュアスケートは、アスレチズムと芸術を融合させる稀有なスポーツ。もっと色々な可能性に挑戦してみたいんです」
禁止技を演じたのは、彼が初めてではない。よく知られているように、1998年長野オリンピックではスルヤ・ボナリーがやはりバックフリップを跳んだ。また2011年欧州チャンピオンのフローラン・アモディオが当時まだ禁止されていた歌詞入りの音楽で滑ったこともあった。いずれもフランス代表の選手である。
「我々フランス人は、良い意味でルールをちょっと破ってプッシュすることが好きなのかも」と笑う。
「自己流でやろうとしては絶対にダメ」
ISU(国際スケート連盟)は、6月の総会でこの技を解禁させる可能性が高い。そうなると他にも試合でこの技に挑んでくる選手が出てくるだろう。