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「井上尚弥をリスペクトしている。だが…」ルイス・ネリは本当に“傲慢”なのか? メディア殺到の来日会見と公開練習で見えてきた“悪童の素顔”
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/04/26 17:01
4月23日の公開練習でカメラに目線を向ける“悪童”ルイス・ネリ。5月6日の東京ドーム決戦を前に、「井上尚弥をKOする」と大胆不敵に言い放った
ネリの発言は本当に“傲慢”なのか?
公開練習は来日会見の2日後、東京・神楽坂の帝拳ジムで行われた。詰めかけたメディア関係者は70人といったところか。ネリ陣営、帝拳ジムのスタッフもいるのでものすごい数だ。ここでもネリは空港取材と同じようにリラックスして、時折笑顔も見せながらインタビューに応じた。
あらためて井上の印象を聞かれたネリは「グレートなボクサーだと思う。スピードがあって、パワフルで、キャパシティーがある」とその実力を認めた。ただ、海外メディアのインタビューで「井上は過大評価されている。平凡なボクサーだ」と発言した真意を問われると、「その通り。井上は過大評価されていると思う」と即答し、その理由を次のように説明した。
「(4団体統一を争った)マーロン・タパレスと10ラウンドまで戦ったということは、過大評価につながる(過大評価の根拠になる)のではないかと思う。井上はいい選手だと思うが、バスケットボールでいうマイケル・ジョーダンのような選手ではない」
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マイケル・ジョーダンといえばバスケットボール界のレジェンドであり、競技のアイコンとも言える存在だ。井上が同等であれば、タパレスをもっと早いラウンドで倒していたはずだ、という意味なのだろう。ネリは井上がリング誌のパウンド・フォー・パウンド・ランキングで1位になったことにも疑問を投げかけ(現在は2位)、空港では「もっといい選手はいる」と指摘。現在1位のテレンス・クロフォード(米)、ライト級王者のジャーボンテイ・デービス(米)の名前を挙げた。
さらに「井上の弱点は見つけている。ディフェンス面以外でもいくつかある」とも口にした。トレーナーのサミール・ロサーノ氏は、日本で井上のスパーリング・パートナーを務めたメキシコ人選手から情報を入手しており、万全の対策を練ってきたと明かした。
こうしてネリの発言をピックアップしていくと、「傲慢」という言葉が思い浮かぶかも知れない。ただ、「井上が有利だという世界中の声をどう思うか」という質問に対する答えはまっとうだ。
「世界中が井上を支持するのは当たり前だと思う。井上は無敗だし、チャンピオンだからだ。ただ、私にも自らの手がある。必ず勝利をつかめると思う」