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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
首位打者・大谷翔平の得点圏打率.130だが「トラウトらと同じで問題ない」ワケ…初球打ち打率4割、39本塁打もスゴい中で“データ以外の懸念”
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2024/04/24 17:01
得点圏打率が取りざたされている大谷翔平だが、「初球打ち」では凄まじい成績を残している
大谷翔平のシーズン通算打率と得点圏での打率を年度別に並べてみよう。比率のカッコ内は得点圏打率÷通算打率である。
2018年/打率.285/得点圏.350/比率(122.8%)
2019年/打率.286/得点圏.292/比率(102.0%)
2020年/打率.190/得点圏.143/比率(75.3%)
2021年/打率.257/得点圏.284/比率(110.5%)
2022年/打率.273/得点圏.314/比率(115%)
2023年/打率.304/得点圏.317/比率(104.3%)
2024年/打率.364/得点圏.130/比率(35.7%)
通 算/打率.278/得点圏.289/比率(104.0%)
2020年と今年を除いて、大谷はシーズン通算打率より「少し高い得点圏打率」を上げていることがわかる。2020年はコロナ禍でのショートシーズンであり、大谷は1度目のトミー・ジョン手術の回復途上にあったが、右腕を故障するなど調子が上がらないままだった。それを除くと大谷は得点圏でコンスタントに打ってきたことがわかる。
実はトラウト、ジャッジらも大谷と同じ傾向
実は「通算打率より少しだけ得点圏打率が高い」のは、MLB打者の一般的な傾向である。
昨年までの大谷の僚友だったエンゼルス、マイク・トラウトは通算打率.300、得点圏打率は.302、ヤンキースのアーロン・ジャッジは通算打率.279、得点圏打率は.284、カージナルスのポール・ゴールドシュミットは通算打率.292、得点圏打率.304である。大谷もほぼ同じ傾向を示している。
一線級の打者は、シーズンに600回前後も打席が回ってくる。無走者も、得点圏も何度も経験する。走者がいる方が多少はモチベーションは上がるだろうが、無走者でもテンションが下がるというものではない。常に安打、本塁打を狙っている状況にそれほど大きな差は生まれないだろう。
データ的に得点圏打率が確実に上がると見るワケ
そもそも「打率」は、セイバーメトリクス的には「信頼すべき指標」とはみなされていない。
セイバーメトリクス研究家のボロス・マクラッケンは複数の投手のデータを調査して、投手の被打率はその能力にかかわらず、長期的に見ればリーグの平均打率の前後に落ち着くことを発見した。つまり被安打は、投手の能力ではなく、その他の要因によって記録されるとし、投手がコントロールできるのは「奪三振、与四球、被本塁打」の3つの要素だけだと断定した。