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「燃え尽き症候群」で引退→26年後に復帰、杉村太蔵44歳に聞いた「元国体王者が今テニスに打ち込むワケ」「現実を受け入れるのに時間が…」
text by
堀尾大悟Daigo Horio
photograph byYuki Suenaga
posted2024/04/13 11:03
高校での日本一となった後に「燃え尽き症候群」となり、テニスとは距離をとっていた杉村。その後、テニスと思わぬ再会を果たすことになる
「最初は僕も1回限り、と思っていました。でも、実際に出場して、負けたことが想像以上に悔しかったんです。だから、絶対に来年も挑戦しようと、自分の意思でそう決めました」
楽しめる人こそ、本当の意味での勝者
その表情には、かつて「北海道から日本一へ」を目指していた杉村少年の姿が少し重なる。ただ、40歳を過ぎた今は勝利がすべて、とは考えていない。あくまで「生涯スポーツとしてテニスを楽しむ」という姿勢を、今年45歳となる杉村は大事にしている。
「80歳、90歳になってもスポーツを楽しめる人こそ、本当の意味でのスポーツの勝者だと思っています。プロではないのだから全力投球ではなく『半力投球』くらいのスタンスで。それが今の自分にとって、幸せなテニスの時間を過ごす秘訣ですね」
最終的な夢「90歳でサーブ&ボレーを決める」
穏やかな表情で語る杉村に、あらためて聞いてみた。杉村太蔵にとって、テニスとはどういう存在なのか?
「僕にとってテニスとは……人生そのものですよ。全力投球していた時代、コートからまったく遠ざかっていた時代、そして今の『半力投球』の時代。どの時代もテニスとは切っても切り離せないし、テニスから学んだことも、テニスで救われたことも多々あります。そんな、かけがえのない存在ですね」
そして、最後にこう付け加えて笑顔を見せた。
「おじいさんになって何もすることがなくなったら、世界中のシニアツアーを回って、現地で出会った人とダブルスを組み、試合に出てみたいですね。そして90歳でサーブ&ボレーを決める。それが僕の最終的な夢なんです」
杉村太蔵は今、本当の意味でテニスプレーヤーとしての「発展期」を迎えている。
<「国体優勝」編とあわせてお読みください>