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「燃え尽き症候群」で引退→26年後に復帰、杉村太蔵44歳に聞いた「元国体王者が今テニスに打ち込むワケ」「現実を受け入れるのに時間が…」
text by
堀尾大悟Daigo Horio
photograph byYuki Suenaga
posted2024/04/13 11:03
高校での日本一となった後に「燃え尽き症候群」となり、テニスとは距離をとっていた杉村。その後、テニスと思わぬ再会を果たすことになる
その多忙な日々の中で「テニスは遊び程度にしかしていなかった」という杉村に、大きな転機が訪れる。2022年5月、毎日新聞社が主催するテニストーナメント「毎日テニス選手権(通称:「毎トー」)」の企画で、元プロテニスプレーヤーの伊達公子さんと対談する機会があった。
元世界ランキング4位のレジェンドを前に「僕も実は毎トーの北海道大会を15歳で優勝して、全国大会に出たことがあるんですよ!」と饒舌に自慢話を披露する杉村。気をよくしたか、思わず“失言”をしてしまう。
「また毎トー、出るのが夢なんですよ。たしか年齢別の大会もあるんですよね?」
つらい経験をしたからこそ…
それを聞き逃さなかった担当者が、杉村に「ぜひ挑戦してください!」と猛アタック。引くに引けなくなり、翌年7月に行われる毎トー(40歳以上の部)への出場を目指す企画「杉村太蔵 毎トーへの道」が実現してしまった。
「いやぁ、リップサービスのつもりだったんですけどね……」と頭をかく杉村。しかし、同時に出場を後押ししたのは、実は大学時代の忌まわしい「バーンアウト(燃え尽き症候群)」の記憶だった。
「生涯にわたってテニスを楽しむという考え方を知って、とても素敵だなと思って。バーンアウトのつらい経験をした僕だからこそ、その『生涯テニス』の楽しさを伝えられるのではないか、と思えたんです」
現実を受け入れるのにかなり時間がかかった
こうして、2022年11月、杉村は本格的な練習を開始。実に25年ぶりとなる公式戦への挑戦が始まった。しかし、実戦から四半世紀も遠ざかってしまったブランクはあまりに大きい。ボールを追うフットワークは重く、すぐ息切れしてしまう。スイートスポットにボールが当たらない……。
「なんでこんなミスするの? とガッカリすることばかりで……18歳と44歳では何もかも違うのはわかっているんです。でも、18歳の国体優勝のときのイメージしかないから、現実を受け入れるのにかなり時間がかかりましたね」