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野ボール横丁BACK NUMBER
「1年前と全然違う」高校野球バットの“売れ筋”が激変している「ミズノ・SSK“2強時代”が終わった」「なぜ売れる? “新2強”ここがスゴい」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKYODO
posted2024/04/12 11:03
センバツでランニングホームランを打った境亮陽(大阪桐蔭高)。彼のバットはSSKだったが…
星 今回の規格変更におけるキーは2つでした。1つ目は「高音」です。ゼットパワーとイーストンは、とんでもなく高い音が出るんですよ。この春の選抜大会に出場した北海、山梨学院、敦賀気比あたりは、ほとんどの選手がイーストンだったんですけど、担当者が高校に持っていったら「これいいね」と即決状態だったみたいです。イーストンは今回、黒のみの一色展開だったので、テレビを観ていてもわかりやすかったですね。まさに「ブラック旋風」といった光景でした。
――イーストンは高校野球の世界では馴染みがまだないですけど、少年野球などの世界ではものすごく人気のあるブランドなんですよね。
星 イーストンはアメリカの企業なんですけど、数年前ローリングスが買収し、そこから日本でも軌道に乗りましたね。両メーカーとも高い音を意識してつくったのか、それともたまたまなのか、そのあたりはよくわからないんですけれども。カタログ等で、それを謳っているわけでもないので。
売れるキーワード【2】「見た目」
――Vコングシリーズは、これまで柔らかく、吸い付くようだと言われた「打感」が売りでした。そこは今回、高校生に響かなかったのでしょうか。
星 おそらく打球が飛ばなくなったことによって、「打感」よりも「音」に惹かれる選手が増えたのだと思います。心理的な面もあるんじゃないかな。飛ばないぶん、飛んでいるような音が好まれたというか。なので、ミズノは急いでVコングECという高い音が出るモデルを追加投入したのですが、出だしが遅れたぶん、そこまで浸透はしなかったですね。SSKも、ちょっと先に発売する予定だったモデルのバットを前倒しして使ってもらえるようにしていました。そのうちの1本は「ビートフライトHT-FT」というモデルなのですが、名前の中に「HT」とあるようにハイトーンが売りです。カタログにも「高音仕様」と謳っているので、明確に高音を意識してつくったモデルだと言えます。あと、選手が重要視したのは形状だったようです。先ほど2つあると話したキーの内のもう1つは「見た目」でした。イーストンもゼットパワーも最大径の部分が長いんです。極端にいうと寸胴型に近い。
なぜ“新バット”は飛ばない?
――細さを気にしている指導者は多かったですもんね。飛ぶ飛ばないよりも、とにかくこの細さに慣れないと、と。2001年に最大径が70mmから67mmに変更となり、今回、67mmから64mmに変更になりました。同じマイナス3mmなんですけど、今回の方が断然、細くなった気がするみたいですね。