2023年M-1・連続インタビューBACK NUMBER
「もう1回M-1出ます!」王者・令和ロマンが語る、なぜ“異例の再出場”宣言をしたか?「芸人を食わせてくれるのはM-1だけですよ」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byYuki Suenaga
posted2024/04/07 11:05
2023年M-1王者の令和ロマン。高比良くるま(29歳、左)と松井ケムリ(30歳)。結成5年8カ月、史上最速でのM-1優勝だった
くるま 漫才熱はないですよ。俺はM-1熱があるだけで。ケムリ先生はM-1熱があるわけではないけど、今の環境ではM-1をがんばるのがいちばん効率がいいと分かっているわけです。
ケムリ 効率、本当そうですね。
くるま 漫才愛があると、理想とM-1とのズレに苦しんだりすることもあるかもしれない。M-1に寄せ過ぎたくない、とか。でも僕らはスタートからM-1しかないから。迷う余地がないんです。関西で育つと偉大な師匠方や先輩方の漫才がちらついて、漫才とはこういうものだみたいなのがあるかもしれないけど、俺らはそういうものも知らないし。
ケムリ 寄席の漫才とかを知らずに育っているので、M-1こそ正義なんです。
「お笑いブームだが、漫才ブームではない」
――令和ロマンはNGK(なんばグランド花月)の舞台にもよく立っているので、大阪所属の若手だと思っていた人も多いようです。
くるま ほとんどの大阪の師匠方にそう思われていますよ。あんまり東京の若手がNGKの舞台に立つことってないですからね。俺らは(2020年に)NHK新人お笑い大賞で優勝したとき、アホな振りをして、NGKの支配人にお願いしたんですよ。「NGKにも入れてください」って。
――NGKというと漫才の聖地みたいなイメージがありますが、やはり楽しいものですか。
くるま いや、楽しくないです。難しいんですよ。NGKも今や大阪の地元の人が来ているというよりは観光客が中心なので。寄席の見方がわかってない人も多い。若手を中心にお笑いブームみたいなのはあるけど、寄席の漫才が流行っているわけではないんですよね。漫才はテレビでちょっと観るくらい。なのでNGKの漫才は、そういう人を起こすスポーツみたいになってきているんです。
ケムリ いろいろな人がいる営業みたいな感じ。
くるま 800人ものお客さんがいる営業です。そういう人を笑わせるのがいちばん難しい。NGKは、もはや漫才の殿堂ではないのかもと思います。もう日本にそんな場所はないというか。だからこそ、せめてNGKで伝えないと漫才の歴史が途絶えちゃうと思うんです。
「東京と大阪の“格差”」
――東の芸人が大阪の劇場でトリを務めて笑いをかっさらっていくのって、本当にカッコいいですよね。