2023年M-1・連続インタビューBACK NUMBER
「もう1回M-1出ます!」王者・令和ロマンが語る、なぜ“異例の再出場”宣言をしたか?「芸人を食わせてくれるのはM-1だけですよ」
posted2024/04/07 11:05
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Yuki Suenaga
◆◆◆
「来年も出ます!」の理由
――M-1で勝つと大抵のコンビは、真っ先に、もうM-1に出なくていいんだと、やっとM-1から解放されたと言うじゃないですか。それくらいM-1は芸人にとって重圧なわけですよね。でも、くるまさんは番組のエンディングで、さっそく「来年も出ます!」と宣言しました。あれにも驚かされました。
高比良くるま 時代が違いますから。昔の芸人は、本当に食えなかったんだと思いますよ。この地獄から這い上がるためにはM-1で優勝するしかないんだ、と。だから、やっと脱出できるんだという思いが、そういう言葉になったんじゃないですか。今は配信やYouTubeもあって、普通に生活できている芸人も多いですし、M-1に苦しめられているという感じも昔ほどないと思うんですよ。
松井ケムリ 僕らはむしろM-1のお陰で食べられているという感じなので。
――苦しめられているという感覚はないですか。
くるま むしろ、恩恵の方が大きい。昔はM-1で準々決勝いったぐらいじゃ何も変わらなかったと思うんです。でも僕らの世代の吉本芸人は準々決勝まで勝ち進んだら、自分の所属以外の劇場にも出られたりする。それで給料が10万円ぐらい増えれば、バイトも辞められるじゃないですか。1年に1回、M-1で働けば1年食えますよみたいな世界なんですよ。遠洋漁業みたいなもんです。2カ月、そこでしっかり仕事をしたら、その蓄えで何とかなる。コント師もピン芸人もほんと食えてないですから。M-1だけですよ。食わせてくれるのは。
――M-1のスタッフには「今年も出ます」と伝えたのでしょうか?
くるま ABCテレビで一緒に番組やっているスタッフには打診というか。出るんですね、みたいな感じで応援してくれていますね。
「漫才熱はないですよ」「M-1こそ正義なんです」
――くるまさんは東京出身で、ケムリさんは神奈川出身ですよね。生い立ちからすると、あまり漫才との接点はなかったようにも思えるのですが、2人の漫才熱のルーツはどこにあるのですか。