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「僕はその言葉を信じて…」メジャー1年目・今永昇太が大切にする“2人の先輩からのアドバイス”「藤川(球児)さんの体験談をお聞きして…」
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2024/03/29 11:03
メジャー挑戦1年目へ、ここまで順調な調整を続けてきた今永翔太(30歳)
「もっと力を抜いて楽にファール、カウントがとれれば、自分としても余裕を持って1球1球投げられるので、今は全力ですべてを出しにいっているという感覚ではある。こちらの平均球速は速いので、僕が生き残るためにはその人たちを上回ろうとするのでなく、どこか異ならなければいけないので、リラックスしたフォームから急にボールが出てくるとか、なんかタイミングが合わないとか、そういったところで勝負しないと生き残れない。もっとリラックスして力を抜いて93、94マイルが出るような、そんなメカニズムで投げられたらいいなと思っています」
今永が語る、理想のストレート
言葉通り、今永特有のホップ成分の高い直球はまだ影を潜めていた。力を込めて一生懸命に投げている。ボールを弾く、しなやかな彼らしいリリースはなかった。この後、自分本来の直球を取り戻すことをテーマに練習に励むのだが、彼は日本時代の技術、イメージは追い求めなかった。ボールもマウンドも気候も、すべてが異なる米国の新たな環境での“似て非なる”新たなる技術を模索した。
その過程で追い求める直球についてこんな表現をした。
「空振りを取っているボールというか、詰まらせたりファウルを取っているボールというのは、ボールを放出しているというか、遠心力の中でボールを離してしまったという感覚。投げちゃったという真っすぐが一番いいので。その真っすぐをコンスタントに出せれば、ファウルも取れるし空振りも取れる」
独特の感覚論、そして表現力。投げる哲学者と呼ばれる理由も理解度が増していった。
「藤川(球児)さんの体験談をお聞きして…」
追い求める米国版直球が体現できるようになったのは14日のアスレチックス戦だった。4回1/3を投げ9三振、無四球、無失点。奪三振はすべてが空振り。米国での最速95マイルをマークしたのもこの試合。彼は自身で掴んだ感覚を言葉にした。
「体重移動とかグローブの使い方とか右足の着地だとか、そういったところがうまくハマり出してきたなという感じですね。真っ直ぐでしっかり差し込んでいかないと変化球を見切られたりとか、バッターが真っ直ぐを狙ってポイントを前にしてくれるんで、少々ボール気味のチェンジアップを振ってくれたりとか、高めを振ってくれたりするんで、やはり相手のポイントをいかに前に出すか、それが僕の生命線になるのかなと思っています。そういう点では有効的な真っ直ぐであったと思います」