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甲子園の風BACK NUMBER
「納得できるか」「納得しないといけないと思います」センバツ選出《不可解選考》問題から2年…聖隷クリストファー主将が振り返る“悪夢の瞬間”
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph byKYODO
posted2024/03/26 06:00
2022年、東海大会で準優勝しながら春のセンバツ選考で落選し、上村敏正監督のもとに集まる聖隷クリストファーの選手たち
そこから、夏に向けて練習の質、濃さが変わった。必死だったという。
「集中力が高まって厳しくなった。自分たちは弱いんだと再認識した。練習の最中に言い合いになるようなこともあった」
自分たちの心の強さもチーム力も上がった、と確信したという。
最後の夏は「県大会ベスト4」
春から夏まではチームも再生し充実した練習を重ねた。しかし結局、夏の大会はベスト4止まり。よくぞ、そこまで復活したという思いもあるが、センバツ落選の雪辱はならなかった。
0-3で敗れた準決勝は「勝てた」と思うことがあるという。
「ワンアウト満塁というチャンスがありました。ヒットでなくても高いバウンドのゴロ、外野フライで1点が入る。でも初球の難しいボールを打ってゲッツーで終わっちゃった。外野に打つつもりなら手を出してないボールでした」
バッターは経験の浅い下級生ではあったが、突き詰めていなかった。上村野球が出来なかった、と悔やむ。
「先生の野球が最後にできなかった。能力がないチームだからホームランなんて打てないし、みんな走れるわけでもない。フォアボールのランナーをバントで送って食らいつく。内野ゴロでも外野フライでも1点を取って守り勝つ。うちらはそういう戦法じゃないと勝てないんで」
自身の3年の夏は投げられなかった。春に肩痛が癒えていて、登板回数が増えた。それが逆にたたって静岡大会前にヒジの痛みが再発した。
最後の大会、3回戦ではファーストで4番。4打数3安打と勝利に貢献したが、突如、発熱してしまう。コロナの疑いもあって、チームから離れて実家に戻った。体調不良で済んだが復帰は準決勝になった。代打で出る準備をしていたが、ネクストバッターズサークルでゲームセットの瞬間を迎えた。
「自分にとっては波乱の夏でした。迷惑しかかけていない(笑)。キャプテン不在で何試合かは勝ってくれた。実家でネット中継を見てました。負けたら終わりの緊張感のなか、不思議な気持ちでした」
大会が終わってすぐ、神戸の病院に行くと、尺骨肘頭部分の骨折と尺骨神経損傷という診断で直ちに手術を勧められた。
「精密検査を受けると、レントゲンでは骨がついてるように見えるけど、ヒジの骨の中がボロボロだった。神経も骨から飛び出していて、ちょっと動かしただけでも痛い。全身麻酔で気が付いたら手術は終わってました」
こうして、弓達の高校野球は終わった。
そして今、次のステージ、大学で野球に励んでいる。武蔵大の野球部は自分に合っている、という。
<次回へつづく>