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「ノゾミもいつかマラソンを走ろうと思ってるの?」アジア新記録を樹立した田中希実は、元マラソン世界女王ラドクリフの問いにうなずき…
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byAyako Oikawa
posted2024/03/07 17:00
世界室内陸上選手権3000mでアジア新記録(8分36秒03)を樹立し、8位入賞を果たした田中希実とマラソン世界記録保持者のポーラ・ラドクリフ
しかしアジア記録の樹立について水を向けると、笑顔も出た。
「2020年から日本記録を毎年更新することができていて、最初は『すごいね』みたいな感じでしたが、最近は『また田中がなんか日本記録出してるなぁ』みたいな空気になり始めていたので、もう一つ上のアジア記録を出せて、アピールできたのはすごく嬉しいです」
汗を拭いながら、自嘲気味に話した。
「今回も1500mと3000mの2種目に出たかったけど、3000mに絞ったことで記録が出たかなと思う。五輪も2種目にしたらハードスケジュールになる。オレゴン世界陸上は五輪を見据えたチャレンジだったが、五輪という本番の舞台でそのチャレンジをするのか、(どういう選択をすると)悔いが残らないのか迷いはある」
マラソン元世界記録保持者のラドクリフからアドバイスも
レースの翌日、田中はマラソンで2時間15分25秒の記録を持つポーラ・ラドクリフと話す機会があった。
テレビ解説者のラドクリフは、3000mのレース中に田中について何度か言及していた。彼女の何十ページにも及ぶ中距離の資料にはオレゴン世界陸上で田中が3種目に挑戦したこと、(2023年ダイヤモンドリーグ)5000mで14分29秒18の日本新を出したことも書かれてある。
「ノゾミ、すごくいいレースだったね」というラドクリフの言葉に、ちょっと緊張気味だった田中にも笑顔が浮かぶ。
ラドクリフが「ノゾミは800m、1500m、5000mの中でどの種目が好きなの?」と問いかけると、田中は「1500mです」と即答した。
「そうなのね。今は好きな種目を頑張ったらいいと思う。800mや1500mでスピードを磨けば、それが5000mや将来的に1万mにも生かされると思うから、現時点で種目を絞る必要はないと思うよ。好きな種目に全力で向き合って」
「いつかマラソンを走ろうと思ってるの?」の問いに…
ラドクリフの言葉に田中は神妙に頷く。